問診は医行為である。

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問診を医行為と認定した最高裁判決があります。
最高裁判所第一小法廷昭和48年9月27日決定 事件番号昭和48(あ)85


判決文を引用します。
強調は筆者。

主文
本件上告を棄却する。

理由

 弁護人植田八郎の上告趣意は、事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない(原判決の確定した事実関係のもとにおいて、被告人が断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、 病歴等を尋ねた行為は、それらの者の疾病の治療、予防を目的としてした診察方法の一種である問診にあたる。また、薬事法二四条一項にいう販売とは、反覆継続し て不特定または多数の者に対してなす意思のもとに医薬品を有償譲渡することを意 味し、必ずしも営利の目的があることを要しない。)。

 よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

昭和四八年九月二七日
最高裁判所第一小法廷



この最高裁の決定だけでは分かりづらいので控訴審判決(高裁判決)を解説します。
なお、控訴審判決は裁判所のサイトには載っていないので確認したい時には県立レベルの図書館や、大学図書館で商用の判例データベースをお使いください。

控訴審判決は
東京高等裁判所昭和47年12月6日判決 事件番号昭和47(う)1260
となります。

これは断食療法に関する事件で、問診行為(医師法違反)と下剤の有償譲渡(薬事法違反)が問われた事件です。

で、判決文の内容は

原判示(第一審判決)の7名はいずれも疾病の治療、予防を目的として被告人のもとを訪れたことが認められるのみにあらず、被告人もまた7名に対し、彼らの疾病の治療と予防を目的とする断食療法を行わせる前提として、断食道場への入寮目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ね、入寮日数、捕食及び断食の日数を指示していた事実が認められる。
(略)
被告人が入寮当時の症状、病歴等を尋ねた行為は、当該相手の求めに応じてそれらの者の疾病の治療、予防を目的として、本来医学の専門知識に基いて認定するのでなければ生理上危険を生ずるおそれのある断食日数等の判断に資するための診察方法という他ないのであって、いわゆる問診に当たるものといわなければならない。



この当時の医行為の定義としては、この判決でも触れられているのですが、
「人の疾病の治療、予防を目的とし、医学の専門的知識を必要とする診断、薬剤の処方、投与または外科的手術を行うこと」
という定義です。

そのため断食の指示自体は医師法違反に問えなかったのでしょう。
現在の医行為の定義は美容外科などを含むために、疾病の治療、予防にかぎらず

「医師が行うのでなければ保健衛生上危害の生じるおそれのある行為」

となり、断食の指示行為自体、「本来医学の専門知識に基いて認定するのでなければ生理上危険を生ずるおそれのある」行為として医師法違反に問えるでしょう。


つまり問診、あるいは他の検査法で禁忌症や危険性を判断しなければならない施術行為自体

「保健衛生上危害の生じるおそれのある行為」

あるいは

「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」

と言えるでしょう。



もう一つ、問診の判例を紹介します。
歯科技工士が義歯作成に際し、印象採得などを行って歯科医師法違反に問われた事件です
それだけならありふれた歯科医師法違反事件ですが、この事件は問診が歯科医行為であるとして、問診の違法性も問われた裁判です。

第一審 札幌地裁昭和55年9月1日判決 昭和54(わ)281
控訴審 札幌高裁昭和56年2月5日判決 昭和55(う)195
上告審 最高裁第三小法廷昭和56年11月17日判決 昭和56(あ)275


やっぱり最高裁判決を見てもわからないので第一審判決の内容を。

 

問診の結果は歯科医療の出発点に位置する。
問診が正確を得ず、不適切に行われる時は以後の歯科医療行為はその指標を失い、ひいては患者の身体等に危害を及ぼすおそれが生ずるものであり、問診が公衆衛生の見地からして歯科医療行為に当たることは明らかと言わなければならない。

被告人は印象採得などを適切に行う目的を以て、印象採得などに先立ち、患者に対し従前の義歯の装着状態等について応答を求めて質問を行っているのであるから、これが歯科医行為たる問診に当たることは言うまでもない。



この判決では印象採得なども歯科医師法違反に問われています。

控訴審も第一審の内容を肯定し、被告人の上告は棄却され、判決は確定しました。

そういうわけで以前の記事で「無免許業者に許される行為は禁忌判断が不要な施術、つまり誰に行っても無害な施術に限られます。」と書いたのは問診を(歯科)医師法違反としたこれらの判決を根拠としています。


国民生活センターの報告書が出された時や先日のクローズアップ現代の放送後に、無免許業者が
「当院はリスク管理をちゃんと行っています。」
と言っているのを見かけるのですが、
リスク管理が必要な施術であることが既に「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」であり、無免許で行えば違法行為なわけです。

無免許業者が合法的に安全性をアピールするのであれば
「当院の施術はリスク管理が不要なほど安全無害な施術です。」
と言えばいいのです。

なのでクローズアップ現代で、無免許業者(ラフィネ)が安全教育に力を入れている、と放送されていましたが、その時点で違法行為であると認めているわけです。

もちろん、健康被害も発生していたのですからラフィネを経営する株式会社ボディワークは自首し、リラグゼーションと称する無免許マッサージ業から撤退すべきです。

工藤はりきゅうマッサージ治療院
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お問い合わせは施術時間にかかわらず
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無免許業者に許される行為は、保健衛生上危害を生じるおそれが無いことを保てる施術に限定される。

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さて、前回の記事では無免許業者が現行判例上、行って良いのは「誰に行っても無害な施術」と書きました。


その根拠となる判例をこれから何度かに分けて解説していきます。

まず最初は歯科技工士が義歯制作のために印象採得などを行ったとし、歯科医師法違反に問われた事件です。

まず参照条文を。

歯科技工士法
第20条 歯科技工士は、その業務を行うに当つては、印象採得、咬合採得、試適、装着その他歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。

歯科医師法
第17条  歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない。

日本国憲法
第13条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第22条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

この事件の裁判は
第一審 大阪地方裁判所昭和32年9月26日判決
控訴審 大阪高等裁判所昭和33年2月10日判決
上告審 最高裁判所大法廷昭和34年7月8日判決 昭和33(あ)411

となり、無料で裁判所のサイトで見れるのは上告審のみになります。

三審制というと3回裁判するイメージが有ると思いますが、最高裁では事実関係を調べません。
詳しくは弁護士の小川義龍先生の記事を参照していただきたいのですが、事実関係を調べるのは控訴審までであり、そのため最高裁の判決文を読んでもさっぱり事実関係がわからないことがあります。

事実関係を把握するためには下級審の判決も読む必要がありますが、あまり裁判所のサイトには載っていないため、商用の判例データベースを用いないと読めないことがほとんどです。

もっともこの事件に関しては最高裁判決だけで十分です。

この事件を私が何故重要視するかといえば、昭和35年のHS式無熱高周波療法の裁判を審理した12人の裁判官のうち、11人がこの事件を審理しており、医業類似行為の禁止処罰は人の健康に害を及ぼすおそれのある行為に限局する判断をした8人もこの歯科医師法違反事件では多数意見(というより反対意見がなかった)をとっているからです。

また昭和35年の判決後に厚生省から出された通達、「いわゆる無届医業類似行為業に関する最高裁判所の判決について」はこの歯科医師法違反の裁判も考慮に入れ、「当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となるものと解されること。」と通知していると考えられるのです。

では最高裁の判決文を少し編集して載せます。
本来、判決文は縦書きなので「右」というのは横書きでは「上」と読み替えてください。
主文

本件上告を棄却する。
理由

 弁護人松浦武、同塩見三俊の上告趣意第一点について。

 思うに、印象採得、咬合採得、試適、嵌入が歯科医業に属することは、歯科医師法一七条、歯科技工法二〇条の規定に照し明らかであるが、右施術は総義歯の作り換えに伴う場合であつても、同じく歯科医業の範囲に属するものと解するを相当とする。

けだし、施術者は右の場合であつても、患者の口腔を診察した上、施術の適否を判断し、患部に即応する適正な処置を施すことを必要とするものであり、その施術の如何によつては、右法条にいわゆる患者の保健衛生上危害を生ずるのおそれがないわけではないからである。

されば、歯科医師でない歯科技工士は歯科医師法一七条、歯科技工法二〇条により右のような行為をしてはならないものであり、そしてこの制限は、事柄が右のような保健衛生上危害を生ずるのおそれなきを保し難いという理由に基いているのであるから、国民の保健衛生を保護するという公共の福祉のための当然の制限であり、これを以て職業の自由を保障する憲法二二条に違反するものと解するを得ないのは勿論、同法一三条の規定を誤つて解釈したものとも云い難い。

所論は、右に反する独自の見解に立脚するものであつて、採るを得ない。

 同第二点について。

 所論は単なる法令違反の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

 よつて、同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三四年七月八日

要約すれば

歯科技工士(および一般人)が印象採得などを禁じられるのはその行為が"保健衛生上危害を生ずるのおそれ無きを保し難い"ためであり、歯科技工士法第20条、歯科医師法第17条は憲法22条(職業選択の自由)や13条(幸福追求権)に違反しない。

ということです。

つまり無免許(歯科)医療が許される絶対条件としては"「保健衛生上危害を生ずるのおそれ無き」を保てること"です。

なので少しでも保健衛生上危害を生じるおそれのある行為を無免許で行えば禁止処罰対象になるわけです。

さて、この歯科医師法違反の裁判の翌年、当業界にとって大事であるHS式無熱高周波療法の最高裁判決が出されるわけです。
既に書いたように、裁判官のうち8人は歯科医師法第17条は合憲と認めながら、医業類似行為の禁止処罰に関しては人の健康に害を及ぼすおそれのある行為に限局すべき、と判断したわけです。

まあ、歯科医師法違反事件は歯科技工士が歯科医の指示書などを貰わずに独自に義歯制作などをしようとして印象採得などをする、って事件ばっかりなんですね。

なので行われている行為も歯科技工士法第20条に規定されているものがほとんどなわけです。
それらの行為が「保健衛生上危害を生ずるのおそれ無きを保ち難い」と認定するのは難しくありません。

ところが医業類似行為はどういう行為を行うのか、事前にはわかりません。
仙台高裁の判決の定義では

疾病の治療又は保健の目的を以て
光,熱,器械 ,器具その他の物を使用し若しくは応用し又は四肢若しくは精神作用を利用して施術する行為であって
他の法令において認められた資格を有する者がその範囲内でなす診療又は施術でないもの

となります。

かなり広い定義になります。

ホメオパシーは錠剤投与なのでもしかしたら医業類似行為の定義から外れるかもしれませんが、全く無害な施術行為の可能性を考えて医業類似行為の禁止処罰を「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」に限局した可能性があります。

全く無害な行為だけを処罰しない、と考えればHS式無熱高周波療法の最高裁判決後に厚生省が
"当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となるものと解されること。"
と通知したのもうなずける話です。
○いわゆる無届医業類似行為業に関する最高裁判所の判決について
(昭和三五年三月三〇日)
(医発第二四七号の一各都道府県知事あて厚生省医務局長通知)

本年一月二十七日に別紙のとおり、いわゆる無届医業類似行為業に関する最高裁判所の判決があり、これに関し都道府県において医業類似行為業の取扱いに疑義が生じているやに聞き及んでいるが、この判決に対する当局の見解は、左記のとおりであるから通知する。



1 この判決は、医業類似行為業、すなわち、手技、温熱、電気、光線、刺戟等の療術行為業について判示したものであって、あん摩、はり、きゅう及び柔道整復の業に関しては判断していないものであるから、あん摩、はり、きゅう及び柔道整復を無免許で業として行なえば、その事実をもってあん摩師等法第一条及び第十四条第一号の規定により処罰の対象となるものであると解されること。
従って、無免許あん摩師等の取締りの方針は、従来どおりであること。
なお、無届の医業類似行為業者の行なう施術には、医師法違反にわたるおそれのあるものもあるので注意すること。

2 判決は、前項の医業類似行為業について、禁止処罰の対象となるのは、人の健康に害を及ぼす恐れのある業務に限局されると判示し、実際に禁止処罰を行なうには、単に業として人に施術を行なったという事実を認定するだけでなく、その施術が人の健康に害を及ぼす恐れがあることの認定が必要であるとしていること。
なお、当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となるものと解されること。

3 判決は、第一項の医業類似行為業に関し、あん摩師等法第十九条第一項に規定する届出医業類似行為業者については、判示していないものであるから、これらの業者の当該業務に関する取扱いは、従来どおりであること。
別紙 略

無免許で許される業務範囲

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2月10日のクローズアップ現代はご覧になられたでしょうか?
番組内容に不満もありますが、同じような意見の国家資格者たちがNHKの番組ページでコメント投稿されていますのでここでは省略いたします。



マッサージ(あはき法第1条)に関しては以前の記事で書いたとおりで、「慰安や医療補助の目的、言い換えれば疲労回復や病的状態の除去を目的として、押す、揉む、叩く、摩擦するなどの行為」であり、無免許でこれを行えば人の健康に害を及ぼすおそれの有無に関わらず、禁止処罰の対象になります。

さて、その他の医業類似行為(あはき法第12条)に関してはどうでしょうか?
というより最高裁判決で述べられた「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」とはどのようなものでしょうか?


結論から言えば禁忌症がある時点で無免許施術は違法行為となります。
禁忌症判断のために問診、検査法を行っていれば医師法違反となります。


そのため無免許業者に許される行為は禁忌判断が不要な施術、つまり誰に行っても無害な施術に限られます。

例を上げればホメオパシーでしょう。
詳しいことはwikipediaの記事に譲りますが、用いられるレメディーという錠剤に有効成分が1分子も入ってないのがほとんどです。

そのため有効性が無いのは当然ですが、害も無いわけです。
副作用もある薬を知識もなしに与えたがる素人の存在に頭を悩ませていたナイチンゲールが皮肉交じりに「素晴らしい」と評価したのもうなずける話です。

詳しくはニセ医学を批判している医師、NATROM先生が書かれた記事、
ナイチンゲール曰く、「ホメオパシー療法は根本的な改善をもたらした」
をお読みください。


さて、私が何故「無免許業者に許される行為は禁忌判断が不要な行為」と断定できるか、不思議に思われるかもしれません。

もちろん、根拠があってそう判断しています。
その根拠は医師法違反をはじめとした無免許医療行為の判例です。

長くなりそうなので今回はここまでにしておきます。

予習されたい方は

歯科医師法違反事件 最高裁判所大法廷昭和34年7月8日判決昭和33(あ)411


断食療法に関する医師法違反、薬事法違反事件。
最高裁判所第一小法廷昭和48年9月27日決定昭和48(あ)85
東京高等裁判所昭和47年12月6日判決 昭和47(う)1260(高裁判決は裁判所サイト未収録)


眼科医が無資格の従業員にコンタクトレンズの検査・処方をさせていた医師法違反事件
最高裁判所第一小法廷平成9年9月30日決定平成6(あ)1215
東京高等裁判所平成6年11月15日判決平成6(う)646



保健師助産師看護師法違反事件(富士見産婦人科病院事件)東京高裁昭和63(う)746
判例タイムズno.691 1989.5.15 p152、別冊ジュリスト219号 医事法判例百選第2版 p10

などをお読みください。


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