役所が違法性を指摘しなかったら合法なのか?

JUGEMテーマ:整体

 

よく整体師などの無免許業者が、警察や保健所から違法性を指摘されなかった、として、自らの施術業務を合法である旨、主張するケースがあります。

では行政が違法性を指摘しないことは本当に合法である根拠となるのでしょうか?

 

1.百円札模造事件


最高裁判決はこちら
 

判決要旨より

 

甲、乙がそれぞれ百円紙幣に紛らわしい外観を有する飲食店のサービス券を作成した行為につき、甲において、事前に警察署を訪れて警察官に相談した際、通貨模造についての罰則の存在を知らされるとともに、紙幣と紛らわしい外観を有するサービス券とならないよう具体的な助言を受けたのに、右助言を重大視せず、処罰されることはないと楽観してサービス券Aを作成し、次いで、作成したサービス券Aを警察署に持参したのに対し、警察官から格別の注意も警告も受けず、かえつて警察官が同僚らに右サービス券を配布してくれたのでますます安心して更にほぼ同様のサービス券Bを作成し、また、乙において、甲からサービス券Aは百円札に似ているが警察では問題がないと言つていると聞かされるなどしたため、格別の不安を感ずることもなく類似のサービス券Cの作成に及んだことが認められる本件事実関係(判文参照)の下においては、甲、乙が右各行為の違法性の意識を欠いていたとしても、それにつき相当の理由があるとはいえない。

 

詳しくは判決本文を読んでいただきたいのですが、甲(判決文では被告人D)は以下のサービス券を作成したことが、それぞれ百円紙幣に紛らわしい外観を有するものを作成したとされています。

 

  •  表面は、日本銀行発行の百円紙幣と同寸大、同図案かつほぼ同色のデザインとしたうえ、上下二か所に小さく「サ ービス券」と赤い文字で記載し、裏面は広告を記載したサービス券1
  • 表面は、サービス券1と同じデザインとしたうえ、 上下二か所にある紙幣番号を「F(甲が経営する飲食店)」の電話番号に、中央上部にある「日本銀行券」 の表示を「F券」の表示に変え、裏面は広告を記載したサービス券2

 

 

甲はサービス券1を作成する前に警察に相談していますが、楽観視してサービス券1を作成し、銀行に頼んで、銀行名が入った帯封をかけてもらいました。

そして帯封をかけたサービス券一束約100枚を警察署に持参し、 助言を受けた防犯係長らに差し出したところ、格別の注意も警告も受けず、かえって前記巡査が珍しいものがあるとして同室者らにサービス券を配付してくれたりしたので、ますます安心し、更に、サービス券の印刷を依頼してこれを作成しました

 

どういういきさつで立件されたのかはわかりませんが、甲は警察にサービス券を持ち込んで、そこで違法性を指摘されなかったにも関わらず、通貨及証券模造取締法違反で有罪となっているわけです。

 

甲の話だけを聞いて、同じようなサービス券を作成した乙も有罪です。

 

2.けん銃部品輸入事件(大阪高裁平成20(う)528、判タNo.1300,302頁)

 

観賞用として米国から拳銃のフレームを輸入する際、拳銃としての機能(殺傷能力)を失わせるのに必要な加工や、法的問題を事前に警察に確認したにも関わらず、輸入したフレームが拳銃部品と認定された事件です。

 

被告人は

 

  •  大阪府警察本部生活安全課の警察官に、 けん銃加工品を無可動銃として合法的に日本に輸入するための方法を相談しに行き、 けん銃の各部品をどのように加工すればよいかなどを口頭で教えられて、 それを書き写したこと
  • 担当警察官が被告人に教示した加工方法は、 平成9年12月に、 警視庁生活安全局銃器対策課長、 警察庁刑事局鑑識課長の連名で、 各管区の警察局保安部長等に対して発出された、 「無可動銃の認定基準について」 と題する書類に示された内容とほぼ同一であり、 機関部体に関連する措置に関する限り、 差異のないものであったこと
  • 被告人は、 上記警察官から、 輸入の際に引き金と撃鉄との連動を外しても、 後で連動する部品を入れると模擬銃器 (銃刀法22条の3) になる可能性があることなどを指摘されたため、 警視庁の銃器対策課に電話をし、 その担当警察官に、 模擬銃器に当たる場合、 アメリカから直接顧客に送る方法なら罪に問われないのかどうかを尋ね、 後刻また電話をして、 その方法であれば罰せられない旨の回答を得たこと
  • さらに、 被告人は、 関西国際空港の税関に出向いて、 税関と警察の係官に対し、 予定していた加工の方法を説明し、 また、 これとは別に、 大阪府警察の銃器対策課にも電話をして、 引き金と撃鉄を連動させる部品の輸入が違法かどうかを問合せ、 違法でないことを確認したこと 
  • この間、 被告人は、 警察での指導内容を参考に、 それよりも復旧が難しい加工を行うこととし、 アメリカにおいて、 連邦の資格を有する銃器工であるガンスミスの協力を得て加工方法を検討した。

 

 

と警察などにアドバイスを求めて、それにしたがっていたわけです。

 

実際、輸入したフレームに関し、税関で他の問題を指摘されてもけん銃部品に該当するような指摘は受けておりません。

 

しかし被告人は本物の銃や実弾を所持していたため、摘発されました。
それでけん銃部品の輸入の罪にも問われ、一審ではその部分も有罪となり、罪が重くなったわけです(懲役10年及び罰金200万円)。

 

控訴審ではこのような事情から、被告人は輸入したフレームがけん銃部品に該当するとは認識できなかったし、違法性を認識できなかったことに相当性の理由がある、として、けん銃部品の輸入に関しては無罪になり、刑が軽くなりました(懲役7年)。

 

当業界にとって大事なのは、役所に合法に輸入できるように確認し、そのアドバイスに従ったにも関わらず、けん銃部品輸入の違法行為と裁判所が認定したことです。

 

3.法令適用事前確認手続やグレーゾーン解消制度

 

そんなわけで整体師などの無免許業者の皆さん、1の乙氏のように、他人(資格商法業者など)から、法的に問題がないような説明を受けているかもしれませんが、それでは違法性の認識がなかったことに相当の理由がある、とはみなされません。

そこで厚労省の法令適用事前確認手続や経済産業省のグレーゾーン解消制度をご利用してみてはいかがでしょうか?

 

厚生労働省:法令適用事前確認手続
 

経済産業省:グレーゾーン解消制度の活用実績

 

ただし、違法と判断される可能性のある両刃の剣です。

 

例えば厚労省の法令適用事前確認手続では、美容師法に関し

 

テーマパーク内において、その来場者を対象に、本人がもっぱら「楽しみ又は変装」の目的で行うとしているが、美容師法(昭和32年法律第163号)第2条第1項にいう「化粧等の方法により、容姿を美しくする」行為は、他人に見せるという目的も含んでいるところ、本件行為は成分的に化粧品と変わらぬものでよそおい、他人に見せて楽しむものであり、客観的に「化粧等の方法により、容姿を美しくする」との区別はできない。


 技術面においても、パーティーメイク等様々なメイクを既に美容業として行っており、本件行為をこれと明確に区別することは困難である。

 

 また、業の形態もテーマパーク内とはいえ、そのよそおう行為自体を反復継続して行うものであるため、当該行為の目的及び形態から、美容師法第6条にいう「美容を業」とするとの範囲に含まれると解する。
 以上の理由により、照会のあった行為については、照会の対象となった法令の条項の適用の対象となると回答する。 

 

回答され、業として、変装のために顔に絵を描く行為は美容師免許が必要な行為と認定されたわけです。

 

4.資格商法業者が、厚労省の回答を誤解していた例

 

山形県内に、あん摩マッサージ指圧師の免許を保有していないにも関わらず、「マッサージ」と表記している業者に注意のメールを送ったところ、その店が加入してる団体の理事長から電話があり、内容は

 

「マッサージ」という表示は、国家資格者によるマッサージであると誤解をさせなければ表示しても良い、と厚労省から回答を得ている。 

とのことでした。

 

そのため、厚労省に確認したところ

 

あん摩マッサージ指圧師によるあん摩、マッサージ又は指圧が行われていない施設において「マッサージ」等と広告することについては、同施設においてあん摩マッサージ指圧が行われていると一般の方が誤認するおそれがあるので、広告しないようお願いします。

という回答内容であり、東京都福祉保健局のウェブサイトにもその旨の記述があります。

 

医師又はあん摩マッサージ指圧師による施術が行われていない施設において「あん摩」、「マッサージ」、「指圧」等と広告することは、医師又はあん摩マッサージ指圧師でなければ行うことができない「あん摩マッサージ指圧」が行われていると誤認されるおそれがあります。
 つきましては、医師又はあん摩マッサージ指圧師による施術が行われていない施設におかれては、このような広告を行わないよう、御注意ください。

 

このように、資格商法業者は行政の回答を、自分の都合の良いように解釈し、広めることがあるので注意しましょう。


 


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