検査法と所見告知の医行為性

JUGEMテーマ:整体

 

以前の記事で超音波検査を行った医師法違反の裁判の判決文を掲載しましたが、この裁判(以下、ME裁判)におけるポイントをまとめます。

 

先に結論を書けば、

 

患者の健康状態を判断するために検査法を行い、その判断結果を患者に告知する行為は医行為です。

 

 

まず超音波画像検査(ME検査)はレントゲンと違い、検査そのものでは人の健康に害を及ぼすおそれがほぼ無い、ということです。

判決文では、使用した機器自体が患者の身体、生命に何ら危害を及ぼすおそれがなくとも、医師法違反になることが書かれています。

 

我々、手技療法の施術者が行う検査法には痛みを誘発する検査法もあり、超音波画像検査よりも人の健康に害を及ぼす恐れがあるとも言えます。

 

以前に取り上げた、カイロプラクティック療法の医師法違反の裁判(以下、カイロ裁判)では触診も

「一定の知識、経験を有する者が行わなければ、効果的な問診、触診を行うことができず、その結果適切な治療がなされないことになるという意味で生理上の危険を伴うものといえる。」

とされています。

 

 

なお、ME裁判の裁判官の意見としては

 

"患者の具体的病状・病変の有無、その程度等を読み取り、自らこれを判定診断する目的で、

ME装置により映し出された患者の臓器の状態等を観察することも、

診察行為の一種として医行為にあたるものと解される"

 

とあります。

 

裁判官は起訴された罪についてしか判断できないので、この考えは裁判官の一意見であり、この後の控訴、上告審ではこの意見の正否が検討されることはありません。

 

しかし我々の業界でも「患者の具体的病状・病変の有無、その程度等を読み取り、自らこれを判定診断する目的で」検査法を行っているわけです。

病名診断までしていない、という批判も来そうですが、カイロ裁判では

 

"弁護人は、本件において被告人は病名診断をしたのではなく所見を述べたにすぎないと主張するが、病名診断というか所見というかは用語の違いにすぎず、所見と称したとしても、人の健康状態について判断し、これを告知する点に変わりはなく、右のような危険があることは同様である。"

 

と判示し、病名に限定せず、「人の健康状態」について判断し、告知する行為を医行為としています。

 

そして、ME裁判で起訴された医行為の内容は

 

"ME検査結果から、患者に特定の疾病があり、入院、手術を要する旨判定・診断し、これを患者に告知したというものであり、

右判定、診断、告知は一体として医行為を構成するものとして起訴されたことが明らかである。"

 

ということです。

 

手技療法の業界に例えるなら

「検査法の結果から、利用者に(症状の原因となる)特定の身体的異常があり、施術が必要な旨を判定し、これを利用者に告知する」

といったところでしょうか。

 

なお、来院時に症状や病歴を聞くことは問診であり、医行為である旨の最高裁判決があることは以前の記事で指摘したとおりです。

 

 

最後にME裁判の判決文の「第三 ME検査について」の「四 弁護人の主張に対する当裁判所の判断」、「第四 医事相談(コンサル)について」を抜粋して掲載します。

 

わかりやすくするために記述の順序を変更しております。

 

 


 

弁護人の主張(一)

 

ME装置は、検査機器であって、患者を診断するための機器ではない。

被告人が右ME装置を使用して実施したME検査は、担当医師から指示を受けてその診断の資料を提供するために行った検査であり、被告人において患者を診察・診断した事実はない。

 

裁判所の判断(一)

 

被告人はME装置を操作して患者の体内の臓器の断層映像を映し出し、そのうち病状・病変、胎児の状態等がよく映しだされた映像部分を静止させてこれを写真にとるとともに、映像を自ら直接観察しながら、独自に患者の具体的病状・病名そのものを読み取りこれを判定・診断していたことは明らかである。

 

加えて、ME写真のコピーは、被告人がME装置を操作して自ら読み取った患者の具体的病状・病名等を患部を図解し医学的用語を駆使しながら詳細な説明を加えたものであり、しかも被告人は、後述するコンサルにおいて、右ME所見を含むME検査の結果判明した病状・病名等を自ら患者に告知しながら精密検査又は手術のための入院を慫慂していた(以下、「入院外交」という)ものである。

 

被告人はME装置を使用して患者の具体的病状・病名等を独自に判定・診断し、その結果をME写真のコピーの余白に所見として記載するとともに、後述するコンサルにおいてこれを自ら直接患者に告げながら入院外交を行っていたものであって、右被告人の一連の行為が本来医師の行うべき診察・診断にあたり、医師法一七条により医師の資格のない者には禁止されたいわゆる医行為に該当することは明らかである。

 

 

弁護人の主張(二)

被告人が実施していた本件ME検査は、人体に危害を及ぼすおそれはなく、しかも担当医師が患者の検査部位を具体的に特定してその実施を指示し、ME主任管理医師の指導監督のもとに行われたものであるから、医師法一七条に違反しない

 

 

裁判所の判断(二)

 

被告人は、担当医師の指示を受けて実施していたME検査において、ME装置を操作して患者の具体的病状・病名等を独自に判定・診断し、これを自ら後述するコンサルで患者に告知しながら入院外交を行っていたものであって、医師の行う診断資料を収集するための検査だけを行っていたとか、あるいは医師の行う診察・診断において単にその手足として関与していたにすぎないというものではない。

 

そして、ME装置の操作により患者の具体的病状・病名等を判定・診断するためには、ME装置の操作技術に加え、人体の臓器の形状等に関する解剖学的知識と経験が必要であり、また各臓器の正常時の状態等を予め知悉したうえ多種多様の病変に対応してこれを的確に判定する生理学的、病理学的知識と経験が必要であって、医師としての資格を有する者が自ら行うのでなければ保健衛生上危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれが存することも明らかである。

 

 以上のとおりで、被告人はME装置を使用し自ら主体となって独自に患者の病状・病名等を判定・診断していたものであり、かかる行為は、使用した機器自体が患者の身体、生命に何ら危害を及ぼすおそれがなく、しかも医師による指示によって行われたとしても、無資格診療となり、医師法一七条に違反することはいうまでもない。

 

筆者注:以下は「後述するコンサル」の説明です。

 

第四 医事相談(コンサル)について

 

富士見産婦人科病院において実施されていたコンサルは、いわゆる患者の治療のための助言や指導ではなく、専ら入院や手術をすることに難色を示す患者を説得しこれを承諾させることを目的として始められたものである。当初担当医師が患者について精密検査ないし手術のために入院が必要であると診断すると、担当医師において直接患者に説明し承諾をとっていたが、医師が診察に忙殺され患者に十分説明するだけの時間がとれないことから患者を説得し切れず、そのため患者との間に問題が生じるケースがあった。

 

医師の説得では患者の承諾が得られず、これを知った被告人が説得をして患者の了承をとり、ことなきを得たという事件があり、このことが契機となり、患者に対し入院や手術をすすめるについても、被告人が担当医師に代わって行えば、時間も十分とれることから、患者の経済的な問題、家庭問題などをも含めて相談に乗ることができ、そのため、患者との間も円滑に行くのではないかという考えのもとに、医師の要望もあって、同年末ころから相談課を新たに設置し、被告人がこれを担当することになったものである。

 


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