無免許施術の健康被害と共同不法行為(ズンズン運動の民事訴訟判決を読んで)

JUGEMテーマ:整体

 

ズンズン運動と称する無免許マッサージで乳児が新潟、大阪で一人ずつ、合計2人死亡する事件があり、業務上過失致死傷罪で有罪になっております。

 

そして大阪の両親が施術を行った者(NPO法人の理事長)、及び広報を行っていた者(副理事長)に対し、損害賠償を求める裁判を起こしていたのですが、2016年末に判決が出され、理事長だけでなく、副理事長の責任も認める判決となっております。

 

元NPO理事長らに賠償命令=「ズンズン運動」で男児死亡−神戸地裁

判決によると、元理事長は14年6月2日、大阪市淀川区のサロンで、男児を太ももの上にうつぶせで乗せた後、首をもむなどして窒息状態にし、6日後に低酸素脳症による多臓器不全で死亡させた。
 山口裁判長は、施術の危険性を予見できたと指摘。元副理事長も13年の同様の死亡事故(筆者注:新潟の事件)後、危険性を確認しないまま施術をブログで広報するなど、ほう助した責任があると判断した。


そして、この民事裁判の判決は裁判所のサイトで閲覧できます。

 

神戸地裁平成27(ワ)1816

 

まず当事者を。

 

原告側
C:原告A,Bの息子で被告Dの施術で亡くなった。
A:Cの父
B:Cの母

 

被告およびNPO法人
被告D:NPO法人の理事長で施術者
被告E:副理事長で事務や広報を担当。Dと内縁関係。
訴外F:NPO法人の施術者(新潟第1事件当時の副理事長)

 

その他
訴外G:被告Dの施術で最初に亡くなった子供(新潟第2事件)。

 

時系列は下記の通り。

平成17年9月:新潟第1事件(NPO法人の訴外Fの施術によりチアノーゼ発生)
平成25年2月:新潟第2事件(被告Dの施術で訴外Gが死亡:報道された新潟ズンズン運動事件はこちら)
平成26年6月:本件事故(大阪)(被告Dの施術でCが死亡)


この裁判の争点ですが、

被告Dは本件事故について不法行為責任を負うことについては争わず,被告らは,原告らの損害について争っていないため,本件の争点は,被告Eが本件事故に関して被告Dを「幇助した者」(民法719条2項)に当たるか否かであり,具体的には,被告Eにおいて被告Dによる本件施術の危険性を認識し得たにもかかわらず,何らこれを回避することをせず,被告Dによる本件施術を容易ならしめたということができるか否かである。

というわけで広報を行っていた副理事長の被告Eが共同不法行為の幇助にあたるかどうかが争点です。
 

民法719条の条文は

  数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2  行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
 

となります。

副理事長Eが被告Dの施術行為の危険性を認識して幇助した、となれば連帯して賠償責任を負うわけです。

 

ではどのように裁判所が副理事長Eに幇助したと認定したのか、見ていきましょう。

 

最初は原告、被告の主張が書かれていますので「第3 当裁判所の判断」から読んでいきましょう。
1認定事実の(2)本件法人における被告らの業務内容より

 

被告Eは,本件法人の設立当初の事務所として使用されていた実家建物の火災後,被告Dの活動を支援するなどして被告Dと懇意となり,被告Dと内縁関係となった後,平成17年5月に本件法人の理事に就任して以降,副理事長として,本件法人の収支等の事務経理全般,官庁への報告,本件法人のホームページやブログの更新作業等を行っていた

 

というわけで副理事長Eは施術自体は行っておらず、事務と広報を行っていたわけです。

 

そして平成17年に新潟第1事件がおきます。

 

本件法人の当時の副理事長であったFが平成17年9月27日にベビーマッサージと称する施術を乳児に行っていたところ,うつ伏せになっていた同乳児の顔色が悪くなり唇が茶色になる異変が生じるという事件が発生した。
その際,Fが施術を中止し,同乳児を抱いて揺らすなどしたところ,乳児の顔色が戻り,泣き声をあげ,大事に至ることはなかった。
被告Eは,当時話題になっていた乳幼児突然死症候群に関する記事をインターネットで検索し,そのうちの一部の記事を印刷して被告Dに対して交付するなどした。

 

そして新潟第2事件(死亡事件)が発生します。
 

イ 同事件は,業務上過失致死事件として捜査が行われ,被告Dは,警察官及び検察官の取調べを受け,警察官からは,身体機能回復指導の施術の際,Gが窒息状態となっていた可能性があること,検察官からは,施術方法に関して医師等の専門家に相談して乳児の窒息の危険がないか確かめるよう促された。

 

被告Eは,新潟第2事件の後,被告Dに対し,Gの死亡の原因が不明であることから,本件施術の方法の変更の必要性,救急講座の受講を受けるよう進言したものの,同事件の発生及び経緯等に関し,監督官庁に報告することはなく,また,ホームページやブログに掲載して公表することはしなかった。
また,被告らは,新潟第2事件後,医師に対して身体機能回復指導の施術の危険性等について尋ねることもせず,乳児に対する身体機能回復指導の施術を継続して行っていた

 

そして新潟地検がこの事件を起訴しなかったために、大阪の事件が発生し、乳児Cが亡くなり、大阪府警が業務上過失致死罪で捜査し、施術を行っていた被告Dは起訴され、有罪となります。副理事長Eは書類送検はされているものの、刑事裁判にはかけられておりません

 

そしてこの民事裁判において、原告は被告Eはブログ記事などによる広報によって、被告Dの施術を幇助した、としてその責任を追求しているのです。


では判決文の(3)被告Eの主張について、を読んでみましょう。

被告Eの主張は青文字裁判所の判断は赤文字で示します。

 

(3) 被告Eの主張について

 

被告Eは,身体機能回復指導には,乳児を床に仰向けにして施術することもあり,同施術の対象乳児ごとに施術内容は異なる上,本件施術中,被告Dは自身の大腿部にうつ伏せとなったCの額に手を当てて頭部を支えて窒息しないようにしていたし,Cの頸部をもむ手指に強い力が入らないようにしていたなどと主張して,身体機能回復指導及び本件施術の危険性を争う

 

しかしながら,前記認定事実(4)及び証拠によれば,被告Dは,首のすわらない時期の添い寝等により,乳児の身体に歪みが生じ,その大元となるのが頸部や腰部のねじれであり,これを解消して乳児の健全な発育を促すためには,首筋の緊張を緩める必要があるなどとして,身体機能回復指導中,乳児の頸部に手指をしっかりと当ててもみほぐすことを重点的に行っていたことが認められ,頸部には神経や血管が多数走っており,徐脈を引き起こす迷走神経反射は頸動脈洞を5秒程刺激することによっても生じ得るものであること,乳児の首は細く,また,筋力も未発達で外からの刺激に容易にさらされることをも併せると,身体機能回復指導が,施術対象乳児によって多少の内容の変更があったり,常時,乳児をうつ伏せにしてその頸部をもむものではなかったとしても,そのことは身体機能回復指導として行われた本件施術の危険性を否定する事情にはならない。

 

また,被告Dが本件施術中にCの額に手を当ててその頭部を支えていたとしても,それにより,Cの胸腹部が圧迫される状態が完全に解消されるものではない上,成人とは異なり胸郭や胸筋が未発達な乳児は,肺に外力が加わりやすいことをも考慮すると,上記事情もまた,身体機能回復指導として行われた本件施術の危険性を否定する事情にはならないことは明らかであって,被告Eの上記主張は採用できない

 

また,被告Eは,本件事故が起こるまで,身体機能回復指導が乳児の発達に有用であることが広く乳児の保護者に認識され,被告Dは,延べ数千回もの施術を行ってきたこと,新潟第2事件は死因が明らかではないとして被告Dの刑事責任は問われていないことを理由に,被告らにおいて,身体機能回復指導の危険性を予見することはできなかったと主張する

 

しかしながら,上記説示したとおり本件施術を含むうつ伏せにさせた状態で頸部をもんで刺激を与えるといった身体機能回復指導自体が有する乳児の窒息の危険性に鑑みれば,身体機能回復指導が本件事故までに数千回行われている実績があるとしても,その危険が現実化しなかったに過ぎず,数千回に及んで身体機能回復指導が行われたことをもって,被告らにおいて同施術の危険性の予見ができなかったとはいえない

 

また,新潟第2事件後については,捜査の結果,Gの死亡の原因が身体機能回復指導以外にあるものと判断されたわけではないのであるから,被告らにおいて,身体機能回復指導の施術に危険がないか点検・確認する機会があったというべきであり,むしろ,そうするよう検察官等から指導を受けていたにもかかわらず,何ら具体的な措置を講じなかったというのでありGの死因が明らかとならなかったことが,身体機能回復指導の危険性の予見可能性を否定する事情になるものではないし,証拠(甲30)によれば,被告Eは,新潟第2事件後,被告Dに対し,心臓マッサージや人工呼吸などの救急救命措置のやり方を学ぶよう示唆していたのであり,遅くとも,その頃までには,身体機能回復指導が乳児を心停止に至らせる危険性を有するものであることを認識し得たものと認められる

 

さらに,被告Eは,被告Dが,一般的に乳児の頸部を揉んだりすることが危険だとしても,被告Dであれば,多くの乳児に身体機能回復指導を行ってきた経験があるためその危険はない旨話し,本件法人の他のスタッフが行うことを禁じていたため,被告Eにおいて,本件施術の危険性を認識することはできなかったと主張する

 

しかしながら,被告Dが身体機能回復指導は経験の豊富な被告Dにしかできない施術であるとして他の本件法人のスタッフが同施術を禁じていたというのは,むしろ,身体機能回復指導の危険性を認識していたことの表れというべきであるし,被告Dは,これまで,医師等の専門家に本件法人の顧問を依頼したり,身体機能回復指導について医師等の監修を受けてその指導・助言を得たりしたこともなく(甲29,31,被告E本人(23頁,26頁,31頁)),被告D自身,マッサージの資格を取得したとか,医学的知識を有していたとも認められないのであるから,被告Dによる身体機能回復指導の施術であれば,乳児の窒息等の危険がないという被告Eの主張は,何ら具体的根拠のない独自の見解にすぎない

 

以上より,被告Eの上記主張はいずれも採用できない。

 

危険性の有無と、危険性の認識は異なりますが、危険性を認識できていた、ということは危険性が有るという前提になります。

 

では重要な点をいくつか。

 

まず施術対象者によって施術方法を変えていたとしても危険な施術である、と判断しています。

富士見産婦人科病院事件でも示されましたが、判断が必要な施術行為は無資格者には許されない、人の健康に害を及ぼすおそれのある行為です。

 

当ブログ記事

無免許業者に許される行為は機械的に行っても安全性が確保される行為に限定される。

無免許業者に許される行為は、保健衛生上危害を生じるおそれが無いことを保てる施術に限定される。

次に被告Eは数千回の施術を行っていたのだから危険性を認識できなかった、と主張していますが裁判所は危険性が現実化しなかっただけの話で、施術方法を考えれば危険性は予見できたとしています。

 

後掲のコンタクトレンズ医師法違反事件では抽象的な危険でも医師法違反が成立する、つまり保健衛生上害を及ぼすおそれがある、としています。

 

また理事長である被告Dは他のスタッフが乳幼児の首を揉むのを禁じていたわけですが、それこそが被告Dが施術の危険性を認識していたことの表れ、としています。

 

コンタクトレンズ医師法違反事件では

医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為などというものは世の中に存在せず、ある行為から右危害を生ずるか否かはその行為に関する技能に習熟しているかどうかによって決まるのであって医師資格の有無に関係しない

という被告人の主張に対し、東京高裁は

医行為とは、「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と理解するのが正当というべきであって、
これと異なる見解に立つ所論は、独自の主張であって、採用の限りでない。

と被告人の主張を退け、免許以外の属人的要素によって安全性の判断を行うことを否定しています

 

コンタクトレンズ医師法違反事件に関する当ブログ記事

技能に習熟していても医師法違反は免責されない。

 

そして新潟の死亡事件では刑事訴追を受けていなかった(本件大阪事件の有罪判決後に新潟地検が起訴、有罪確定)ことを理由に、危険性を予見できなかったとも主張していたわけですが、他の死亡原因が特定されたわけではないし、検察官から医師による確認を促されたのだから危険性は予見できてた、というわけです。

 

この時点で医師による確認を受けて、安全であるという意見を貰えていたなら被告Eは責任を問われずに済んだかもしれませんし、そうなれば安全確認をした医師が責任を問われることになります。

 

ズンズン運動では新潟の死亡事故で危険性は予見できる、と判断されましたが他の手技療法でも国民生活センターが健康被害の報告書を出されており、人の健康に害を及ぼすおそれは予見できます。
 

よって、整体やカイロプラクティック、リラクゼーションなど、健康被害が消費者庁に報告されている施術を行う場合、その施術方法に関して医師のお墨付きを得なければ危険性は予見できた、と判断されてもおかしくありません。

 

このズンズン運動民事判決は過去の医師法などの判例から照らして妥当な判決ですが、直接、無免許マッサージの危険性の予見性を認定したという点で重要です。

 

ズンズン運動事件でお亡くなりになられたお子様たちのご冥福を祈らせていただくとともに、このような被害を二度と生じさせないよう、ご遺族が得られたこの判決を無免許施術の撲滅のため、活用させていただきます。


整体、カイロプラクティック、無免許マッサージなどの違法施術の返金を求めるには?


無免許であることを知らされずに、整体師やカイロプラクティック、リラクゼーションなどと称する無免許マッサージなどの違法施術を受けた場合、施術料金の返還を受けることは可能でしょうか?

 

また判例を引用しながら解説していきます。

消費者庁の資料になります。
http://www.caa.go.jp/planning/pdf/140516_shiryou03.pdf

 

この65頁目の判例となります。


名古屋地裁 昭 54(ワ)2242 号 出典 判時1081号104頁

 

原告の娘、春子さん(昭和48年生まれ)は生後間もなく治療困難な難聴と診断されます。
そして難聴に良いと知人から聞いて、被告の加持祈祷治療を昭和51年11月から一回8,000円で受け、昭和54年3月まで合計737回、合計589万6,000円を治療費として支払ったものの、難聴は改善しませんでした。

そして治療費の返還を求めた訴訟がこの事件となります。

 

原告は治療費返還の請求理由として

 

  1. 債務不履行に基づく損害賠償請求
  2. 治療費返還契約に基づく請求
  3. 公序良俗違反の契約無効による返還請求

といったのを挙げています。

 

1は治癒を約束したにも関わらず、治癒させていないから債務不履行である、よって支払い済みの治療費を返せ、ということです。

 

2は原告によると、被告は難聴を治せない場合には治療費を返還することを何度も約束したそうです。

 

3は被告の行為は何としても子の病気を治したい親の弱みにつけこんで、法外な料金を博する暴利行為であり、本件治療契約の正当な対価を超えた部分は公序良俗に反し無効であるとし、そして本件治療契約における正当な対価は一回につき金一、〇〇〇円を超えないとして、超過分の返金を求める、というものです。

 

1については、治療行為は治癒を保障するものではないから却下されます。

 

原告主張のごとき治癒という結果を目的とした特約付治療契約ないし請負契約と認めることはできず、治療の処理を目的とした一種の委任契約と認めるのが相当である。
 そうすると被告は春子の難聴を治癒させることができなかったが、このために原告に対し債務不履行の責任を負担するいわれはない。

 

というのが裁判所の判断となります。

 

2については証拠不足で返還契約をしたとは認められないとして却下。

 

で、3についてですが、この内容については前掲の消費者庁の資料にも書いてあります。

 

被告は1年内に治す、と言っていたので1年経過時に原告に対して治療継続の再考を促すべきであった、と裁判所は判断しています。

そして一回あたりの治療費ですが、娘さんだけでなく、原告の家族3人の祈とうも必要ということで4人分の祈祷料として8,000円となっておりました。

被告が所属する善導会では一回あたりの祈祷料は2,000円でした。

 

なので一回あたり2,000円で、1年間分(354回)の治療費(70万8,000円)は正当な取得と認め、それ以上の治療費は公序良俗に反するとして、518万8,000円の返金を命じたのでした。

 

暴利行為の禁止、ということで消費者問題の判例としても重要です(だから消費者庁の資料でも紹介されている)。

 

さて、判決の中で

 

前記一、3で認定した被告の療術行為が医師法一七条で禁止されている医業の内容である医療行為に当たるとは認められず、またあん摩師・はり師・きゆう師及び柔道整復師法一二条で禁止されている医業類似行為に当たるものとも認められない。
そして前認定のごとき被告の加持祈とうはそれ自体が公序良俗に反するということができないのはもちろんである。

 

とあるので、当業界の方々はどのような治療行為だったのか、気になるかと思います。

 3 被告のした施術ないし加持祈とうの大要は以下のとおりであった。

 

(一)バイブレーターによるマッサージ。患者の着衣の上にタオルを置き、その上から約一五分間、市販のバイブレーターを用いて身体をマッサージする。

 

(二)高野山温灸。患者の身体の上にタオルと八つ折りにした市販の紙を重ねて置き、その上から高野山燈心会本部特製の円筒形のもぐさの固まり(直径約一・五センチ、長さ約一五センチ)に点火した部分で軽く圧して皮ふを温める。全身数十箇所のつぼに約一〇分間施す。

 

(三)高野山オリーブ油を脱脂綿にしみこませて耳に入れる。

 

(四)吸引。直径約一・八センチ、長さ約四・五センチのガラス製の円筒形の器具を用いて、患者の首の皮ふを押圧して引っ張る。一〇回位施す。

 

(五)抜き取り封じ。市販のプラスチック製の色付きコップにざらめ砂糖を入れ、その上に人形を印刷してある形を細かく折って入れ、コップに蓋をする。その蓋の上に善導会本部会長小松観晃から買受けた紙(悪霊を押さえる意味の梵字が印刷されている。)を約一〇分間呪文を唱えながら糊ではりつける。

 

(六)延命封じ。鬼を追い払う意味の文字や六体地蔵の図案が書いてある紙を患者の身体に当て、これを二重に封筒に入れて川に流す。

 

「療術行為」と言っているので医業類似行為じゃないか、という気もしますし、(一)なんかは無免許マッサージの可能性も。(二)は灸、(四)は医業類似行為じゃないかと思います。(三)が医業類似行為か、宗教行為かは微妙ですが。

 

さて、このような行為も医業類似行為とは認められないんだ、と思ったらダメです。

 

判決文全文を読めばわかるのですが、
原告、被告ともに被告の治療行為を医業類似行為だとは主張していないんです。

 

日本の民事訴訟は弁論主義といいまして、原告、被告、どちらも主張していない事実を判決の基礎としてはいけないのです。

 

弁論主義について、弁護士事務所が解説している記事がありますので詳しくはそちらをご覧ください。

 

なので裁判官が勝手に被告の治療行為を医業類似行為と認定しては弁論主義に反することになってしまうのです。

 

仮に被告の治療行為を医業類似行為と認定し、違法施術契約だから公序良俗に反し、無効な契約として全額返金を命じたとしましょう。

 

この場合、被告は控訴して、弁論主義に反する、と主張するでしょう。
こうなると高裁ではその主張を認めて地裁に差し戻しをする可能性もあります。

また医業類似行為の禁止処罰は最高裁判決により「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」に限定されています。
そのため、控訴審でひっくり返される危険もあるわけです。

 

そのため暴利行為と認定し、一定額の返金を命じたのは弁論主義と良心の狭間での判決だと言えます。

 

そして「医業類似行為」という言葉を判決で出したのは、原告がさらなる返金を求める場合でも、あるいは被告が控訴した場合でも、被告の治療行為を医業類似行為として主張できるように、という配慮だと思うのです。

 

この裁判、事件番号から昭和54年に起こされ、判決は昭和58年3月31日です。

この間、薬事法に関し、無認可医薬品については食品と同成分で有効無害なものであっても、その製造販売を禁止処罰するのは憲法22条に反しない、という判決と、無認可の医療機器の製造の禁止処罰にあたっては「人の健康に害を及ぼすおそれ」を判断する必要は無い、という判決が最高裁で出されます。

 

つかれず事件:昭和57年9月28日判決

吸引器事件:昭和54年3月22日判決

 

この薬事法判例の流れからすれば医業類似行為に関する最高裁判例の変更も可能だったと思われます。
裁判官はその可能性も認識していたのではないでしょうか?

 

さて、この裁判、判例データベースでは「控訴」と書かれていますが、控訴審の判決は判例データベースには収録されていないようです。控訴をしたのが原告、被告、どちらなのか、その双方なのかもわかりません。

 

判決を得ないで控訴審を終了するとすれば控訴取り下げ、認諾、和解といったものが挙げられます。

控訴できるのは一審判決後の約2週間だけです。
なので迷ったら控訴、という感じです。

 

弁護士向けに仕事術を解説しているページなのですが
 

もし、依頼者が迷っているようであれば、とりあえず控訴をすすめましょう。 
控訴をした後に考え直して取り下げるということ可能ですので。 
一方、もし控訴をしなかった場合には、2週間を過ぎると控訴が絶対にできなくなってしまいます。 
一週間以内に控訴するかしないか決断。 
迷ったら控訴。

 

で、50日以内に控訴理由書を提出します。
なのでとりあえず控訴してから判例などを調べて控訴理由書を書くこともあるわけです。

 

昭和58年ですから今のようにコンピューターなんて普及しておらず、オンラインの判例データベースなんてありません。

被告としては500万円も返せと言われたらとりあえず控訴するでしょう。

 

原告としてはどうなんですかね?
弁護士はついていましたから、主張していない「医業類似行為」という言葉には反応するでしょうね。

原告が控訴しなくても、被告が控訴した以上、答弁書を作成する必要があるわけで、そのときに「医業類似行為」という言葉から必要な判例を調べ、

「被告の療術行為は医業類似行為であり、違法施術契約であるから公序良俗に反し、契約は無効。よって被告は治療費を全額返金する義務がある。」

と主張できるはずです。

 

そしてこのように暴利をむさぼられた被害者に対し、「人の健康に害を及ぼすおそれ」が証明されなければ治療費を返金する必要性は無い、と言える人はよほどの自己責任主義者でしょう。

 

このように倫理観を持たずに暴利をむさぼる業者の存在も、無免許業者による医業類似行為を禁止する理由としては十分です。

つまり昭和35年判決の判例変更の可能性があったわけです。

 

控訴審の最初の口頭弁論で原告の上述のような主張がされた場合、被告(とその弁護士)はどう考えるか。

 

まず自分の治療行為が判決で違法とされる可能性を考えなければいけません。
もし違法認定されれば、他の患者さんたちにも返金する必要が出てきます。
なので違法認定の判決は回避しなければいけません。

そうなると控訴取り下げ、認諾、和解といった選択肢が出てきます。

 

原告も控訴していれば被告が控訴を取り下げて終了、というわけにもいきません。

というわけで認諾や和解で控訴審判決を回避したのではないか、と思うわけです。

 

私が判例データベースを検索しても、医業類似行為を違法施術契約として施術料金の返還を求めた裁判の判決はありません。

この裁判の1の請求理由のように、治癒されなかったことを理由に、消費者契約法の不実告知に該当するとして、施術料の返還を求めた訴訟はありますが、敗訴しております。
本文は収録されていないので詳細は不明なのですが。

おそらく弁護士で医業類似行為というのを知っている人が少ないのでしょう。

 

また知っている場合、薬事法の最高裁判例も把握していると思われるので判例変更の可能性が高いことを示しながら示談しやすいわけです。裁判になったとしても和解に持ち込みやすく、判決は出されません。
被害者としては被害が回復されることが目的であり、必ずしも判決を得る必要はありませんから。

 

というわけで無免許業者の皆様、違法施術として全額返金を求められた場合、拒否できる法的な理論武装はできておりますかな?


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