役所が違法性を指摘しなかったら合法なのか?

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よく整体師などの無免許業者が、警察や保健所から違法性を指摘されなかった、として、自らの施術業務を合法である旨、主張するケースがあります。

では行政が違法性を指摘しないことは本当に合法である根拠となるのでしょうか?

 

1.百円札模造事件


最高裁判決はこちら
 

判決要旨より

 

甲、乙がそれぞれ百円紙幣に紛らわしい外観を有する飲食店のサービス券を作成した行為につき、甲において、事前に警察署を訪れて警察官に相談した際、通貨模造についての罰則の存在を知らされるとともに、紙幣と紛らわしい外観を有するサービス券とならないよう具体的な助言を受けたのに、右助言を重大視せず、処罰されることはないと楽観してサービス券Aを作成し、次いで、作成したサービス券Aを警察署に持参したのに対し、警察官から格別の注意も警告も受けず、かえつて警察官が同僚らに右サービス券を配布してくれたのでますます安心して更にほぼ同様のサービス券Bを作成し、また、乙において、甲からサービス券Aは百円札に似ているが警察では問題がないと言つていると聞かされるなどしたため、格別の不安を感ずることもなく類似のサービス券Cの作成に及んだことが認められる本件事実関係(判文参照)の下においては、甲、乙が右各行為の違法性の意識を欠いていたとしても、それにつき相当の理由があるとはいえない。

 

詳しくは判決本文を読んでいただきたいのですが、甲(判決文では被告人D)は以下のサービス券を作成したことが、それぞれ百円紙幣に紛らわしい外観を有するものを作成したとされています。

 

  •  表面は、日本銀行発行の百円紙幣と同寸大、同図案かつほぼ同色のデザインとしたうえ、上下二か所に小さく「サ ービス券」と赤い文字で記載し、裏面は広告を記載したサービス券1
  • 表面は、サービス券1と同じデザインとしたうえ、 上下二か所にある紙幣番号を「F(甲が経営する飲食店)」の電話番号に、中央上部にある「日本銀行券」 の表示を「F券」の表示に変え、裏面は広告を記載したサービス券2

 

 

甲はサービス券1を作成する前に警察に相談していますが、楽観視してサービス券1を作成し、銀行に頼んで、銀行名が入った帯封をかけてもらいました。

そして帯封をかけたサービス券一束約100枚を警察署に持参し、 助言を受けた防犯係長らに差し出したところ、格別の注意も警告も受けず、かえって前記巡査が珍しいものがあるとして同室者らにサービス券を配付してくれたりしたので、ますます安心し、更に、サービス券の印刷を依頼してこれを作成しました

 

どういういきさつで立件されたのかはわかりませんが、甲は警察にサービス券を持ち込んで、そこで違法性を指摘されなかったにも関わらず、通貨及証券模造取締法違反で有罪となっているわけです。

 

甲の話だけを聞いて、同じようなサービス券を作成した乙も有罪です。

 

2.けん銃部品輸入事件(大阪高裁平成20(う)528、判タNo.1300,302頁)

 

観賞用として米国から拳銃のフレームを輸入する際、拳銃としての機能(殺傷能力)を失わせるのに必要な加工や、法的問題を事前に警察に確認したにも関わらず、輸入したフレームが拳銃部品と認定された事件です。

 

被告人は

 

  •  大阪府警察本部生活安全課の警察官に、 けん銃加工品を無可動銃として合法的に日本に輸入するための方法を相談しに行き、 けん銃の各部品をどのように加工すればよいかなどを口頭で教えられて、 それを書き写したこと
  • 担当警察官が被告人に教示した加工方法は、 平成9年12月に、 警視庁生活安全局銃器対策課長、 警察庁刑事局鑑識課長の連名で、 各管区の警察局保安部長等に対して発出された、 「無可動銃の認定基準について」 と題する書類に示された内容とほぼ同一であり、 機関部体に関連する措置に関する限り、 差異のないものであったこと
  • 被告人は、 上記警察官から、 輸入の際に引き金と撃鉄との連動を外しても、 後で連動する部品を入れると模擬銃器 (銃刀法22条の3) になる可能性があることなどを指摘されたため、 警視庁の銃器対策課に電話をし、 その担当警察官に、 模擬銃器に当たる場合、 アメリカから直接顧客に送る方法なら罪に問われないのかどうかを尋ね、 後刻また電話をして、 その方法であれば罰せられない旨の回答を得たこと
  • さらに、 被告人は、 関西国際空港の税関に出向いて、 税関と警察の係官に対し、 予定していた加工の方法を説明し、 また、 これとは別に、 大阪府警察の銃器対策課にも電話をして、 引き金と撃鉄を連動させる部品の輸入が違法かどうかを問合せ、 違法でないことを確認したこと 
  • この間、 被告人は、 警察での指導内容を参考に、 それよりも復旧が難しい加工を行うこととし、 アメリカにおいて、 連邦の資格を有する銃器工であるガンスミスの協力を得て加工方法を検討した。

 

 

と警察などにアドバイスを求めて、それにしたがっていたわけです。

 

実際、輸入したフレームに関し、税関で他の問題を指摘されてもけん銃部品に該当するような指摘は受けておりません。

 

しかし被告人は本物の銃や実弾を所持していたため、摘発されました。
それでけん銃部品の輸入の罪にも問われ、一審ではその部分も有罪となり、罪が重くなったわけです(懲役10年及び罰金200万円)。

 

控訴審ではこのような事情から、被告人は輸入したフレームがけん銃部品に該当するとは認識できなかったし、違法性を認識できなかったことに相当性の理由がある、として、けん銃部品の輸入に関しては無罪になり、刑が軽くなりました(懲役7年)。

 

当業界にとって大事なのは、役所に合法に輸入できるように確認し、そのアドバイスに従ったにも関わらず、けん銃部品輸入の違法行為と裁判所が認定したことです。

 

3.法令適用事前確認手続やグレーゾーン解消制度

 

そんなわけで整体師などの無免許業者の皆さん、1の乙氏のように、他人(資格商法業者など)から、法的に問題がないような説明を受けているかもしれませんが、それでは違法性の認識がなかったことに相当の理由がある、とはみなされません。

そこで厚労省の法令適用事前確認手続や経済産業省のグレーゾーン解消制度をご利用してみてはいかがでしょうか?

 

厚生労働省:法令適用事前確認手続
 

経済産業省:グレーゾーン解消制度の活用実績

 

ただし、違法と判断される可能性のある両刃の剣です。

 

例えば厚労省の法令適用事前確認手続では、美容師法に関し

 

テーマパーク内において、その来場者を対象に、本人がもっぱら「楽しみ又は変装」の目的で行うとしているが、美容師法(昭和32年法律第163号)第2条第1項にいう「化粧等の方法により、容姿を美しくする」行為は、他人に見せるという目的も含んでいるところ、本件行為は成分的に化粧品と変わらぬものでよそおい、他人に見せて楽しむものであり、客観的に「化粧等の方法により、容姿を美しくする」との区別はできない。


 技術面においても、パーティーメイク等様々なメイクを既に美容業として行っており、本件行為をこれと明確に区別することは困難である。

 

 また、業の形態もテーマパーク内とはいえ、そのよそおう行為自体を反復継続して行うものであるため、当該行為の目的及び形態から、美容師法第6条にいう「美容を業」とするとの範囲に含まれると解する。
 以上の理由により、照会のあった行為については、照会の対象となった法令の条項の適用の対象となると回答する。 

 

回答され、業として、変装のために顔に絵を描く行為は美容師免許が必要な行為と認定されたわけです。

 

4.資格商法業者が、厚労省の回答を誤解していた例

 

山形県内に、あん摩マッサージ指圧師の免許を保有していないにも関わらず、「マッサージ」と表記している業者に注意のメールを送ったところ、その店が加入してる団体の理事長から電話があり、内容は

 

「マッサージ」という表示は、国家資格者によるマッサージであると誤解をさせなければ表示しても良い、と厚労省から回答を得ている。 

とのことでした。

 

そのため、厚労省に確認したところ

 

あん摩マッサージ指圧師によるあん摩、マッサージ又は指圧が行われていない施設において「マッサージ」等と広告することについては、同施設においてあん摩マッサージ指圧が行われていると一般の方が誤認するおそれがあるので、広告しないようお願いします。

という回答内容であり、東京都福祉保健局のウェブサイトにもその旨の記述があります。

 

医師又はあん摩マッサージ指圧師による施術が行われていない施設において「あん摩」、「マッサージ」、「指圧」等と広告することは、医師又はあん摩マッサージ指圧師でなければ行うことができない「あん摩マッサージ指圧」が行われていると誤認されるおそれがあります。
 つきましては、医師又はあん摩マッサージ指圧師による施術が行われていない施設におかれては、このような広告を行わないよう、御注意ください。

 

このように、資格商法業者は行政の回答を、自分の都合の良いように解釈し、広めることがあるので注意しましょう。


 


地域健康づくり指導者講習、赤十字健康生活支援講習を受講してきました。

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福島市で、タイトルの講習会がありましたので受講してきました。

 

赤十字の受講証になります。

 

 


国は整体などの無資格施術の規制へ動いています。

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久々のブログ更新です。

さて、無免許の整体師から当ブログの感想として下記の内容が送られてきました。

 

一個人の意見でどんな記事を書こうが勝手ではありますが、
そんな記事を書こうが国が動かない限り整体業はなくなりません。

 

現在、厚生労働省では鍼灸マッサージ師、柔道整復師などの広告に関する検討会が開かれております。

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会

 

下記に引用したように、施術者団体以外の方々(医師会、患者団体、弁護士、法学者)も無資格施術の危険性を認識し、規制の必要があることで一致しているわけです。

 

またこのブログで何度も紹介したように、国民生活センターや消費者庁から、整体やカイロプラクティックなどの無資格施術による健康被害も報告されているわけです。

 

というわけでタイトルに書いたように、国は無資格施術の規制に向けて動き出しているのです。

 

SNSをいろいろ見てみましても、広告検討会に関して言及しているのは国家資格者ばっかりで、無資格者が言及しているのを見たことがありません。

 

まあ、資格商法業者にとっては知られては困る情報でしょうね。

 

第1回検討会の議事録より

○山口構成員(患者団体)

 先ほど無資格者の話が出ていたのですが、私たちの所でも整体とかカイロプラクティック、マッサージ屋さんと言うのでしょうか、アルバイトの人がやっているようなもみほぐしとか、そういう所できつく押されて被害を受けたという御相談が結構あります。

ところが、相談のときに、いや、整体やカイロプラクティックというのは資格がないのだということを言うとびっくりされるのです。ですから、今、どの人がどの資格を持っていて、何を対象にしているのかということが非常に分かりにくくなっています。

 先ほど治療ということをおっしゃったのですが、例えば施術という言葉を使えば、治療ではないのですねというイメージになるわけです。今、どういう資格者がやっているのかということが分からない実態になるような名前であることに非常に問題があって、特にあはき、柔整というのは国家資格ですから、やはり、国家資格であることを一般の方が知ることができるような内容にする必要があるのではないか。

 そうすると、無資格者がやっていることについては、なぜここまで許されているかと、今、すごく重なっている部分があると思います。資格者はここまでできるが、無資格者でもこんなことをやっているではないか。そこをもう少し整理していく必要があって、それを一般の人がちゃんと使い分けができるように、ガイドラインの中できちんと整備していく必要があるのではないかと思います。

 

○釜萢構成員(医師会)

 私どもも無資格者の方の広告のあり方が一番、今回の検討の中で大事だと思っております。

(略)

それぞれの法律の中で、この業務はこの資格がないとできないということになると、資格がないのにそれをやれば虚偽ということになりますから、そういう整理が確かにいいのだろうと思いますが、実際にそれが果たしてうまくいくのかということについては、現時点では非常に難しそうだなという予想を持っております。

 

○磯部構成員(法科大学院教授)

 従前、医業類似行為の規制については 2 つのポイントがあって、直接的に人体に有害となるという意味で、積極的な弊害があるという点に加えて、そういうのに頼ることで、患者が適切な医療を受ける機会を失するおそれがあるという、消極的弊害もあると。この 2 つを当初、厚生省は規制の根拠に挙げていたはずですが、昭和 30 年代の最高裁が、いろいろな理屈はあるのですが、職業選択の自由にも関わる話だしということで、積極的な弊害が具体的にあるようなものについてのみ、要は積極的弊害がある場合のみを規制対象とするという解釈をしているものですから、恐らくその点、そこは狭く解しているところがあると思うのです。

あん摩、はり、きゅう、柔整以外の医業類似行為については、医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあれば禁止処罰にするけれど、それ以外については放任しているというのが、恐らく今までの運用のような気がするのですが、そもそもその考え方自体、学説上は批判があって、結論から言えば消極的弊害ということをやはり重視するべきではないかと、私などは考えていますし、恐らく多数説はそうではないかと思います。

 そういう意味では、放任行為であるとされている業務に従事する人も、医業ないしは医業類似行為へのアクセスを不当に害するような形で広告等をする場合には、それは広告行為が規制されてもよいでしょうし、医業類似行為を行う業務においても、国民が医療へのアクセスを損なわれてしまうような、そういう消極的弊害が起こり得るような広告であれば、これも規制の対象としていいのだという、そういう考え方に立って、今後このガイドラインについて考えるということでよいのであれば、それはそれで私は大賛成だなという気がしている次第です。

○釜萢構成員(医師会)

 それから、先ほど磯部先生からお話がありまして、消極的な弊害というのは私は初めて伺ったのですが、それはすごく大事で、無資格者をどうやって規制していくかという根拠が私はよく分からなかったので、すごく難しいだろうと思っていたのですが、医療安全を確保する意味から、国民を守るためにどのようにしっかりと規制の網を掛けるかということが大分見えてきたような気がしまして、そこを是非しっかりと詰めていくことが大事だなと感じた次第です。

○釜萢構成員(医師会)

 この広告の検討の中で無資格を扱わなければならない理由は、国民の医療の安全が脅かされているという大変強い危機感からであり、そういう資格がなくて業に携わっている方を排除するということでは決してないのですが、国民の安全を守るためには、資格のない業者に対してもしっかりと目を光らせていかなければいけないという認識です。

そうでないと、健康被害の事例は医師の所にたくさん来るわけです。そういう無資格の施設で術を受けることによって健康被害が生じた事例を、私どもはたくさん経験しております。ですから、それを何とかしなければいけないだろうという危機感から、 1 つはこの検討会が開かれていると認識しております。

○木川構成員(弁護士)

 無資格者の話を広告に限定していった場合に、要するに無資格者が医業類似行為(筆者注:人の健康に害を及ぼすおそれのある行為)をやっていると誤認させるような広告をしてはいけないということになるのかなと思うのです。

そうした場合に、医業類似行為とそこに至らないものは何かという話になってきて、鍼灸は分かりやすいと思いますが、マッサージ、体に触わるものがどこから以上だったら医業類似行為で、どこから以下ならそうならないのかということが明確になれば、それ以下のものをやっているということについては、医業類似行為をやっていると誤認させることにならないし、それ以上をやっているということになったらそれは誤認させるということになるのかなと思います。

 


整体師やカイロプラクターの損害賠償請求を裁判所は認めない。

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久々のブログ更新です。

入れ墨(タトゥー)の彫師が医師法違反で逮捕され、大阪地裁で有罪判決を受け、被告人は控訴しております。

 

(2019/01/18追記。タトゥー施術に関しては大阪高裁で逆転無罪判決となっており、現在、検察が最高裁に上告しております。)

 

こんな具合に、入れ墨を彫る行為は医行為(保健衛生上、人の健康に害を及ぼすおそれのある行為)である、というのが常識的な解釈であります。

今回、紹介する裁判例は、彫師の競合禁止契約が無効とされた事件です。

 

被告は原告の入れ墨店で働いていた彫師ですが、競業避止条項に反して独立開業したため、原告が減った売上などの損害賠償を請求した事件です。

出典 D1-law.com判例体系文書番号 28254708
名古屋地方裁判所平成29年12月01日判決 平成28年(ワ)第4337号

 

本件は、原告が経営する入れ墨店において彫り師として稼働していた被告が、原告被告間で締結された業務委託契約上の競業避止条項に違反し、かつ、原告の従業員を違法に引き抜いて、自ら入れ墨店を開設したことにより損害を被ったとして、原告が被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償金132万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成28年6月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

この事件で問題としている競業避止条項は

被告は、原告及び原告のグループ店舗を退店又は退職及び失職した場合、原告及び原告のグループ店舗から半径1.5キロメートル以内における、独立、営業活動及び営業行為を一切禁止とする。

という内容です。

 

裁判所は「業として客に入れ墨の施術を行うことは、医師法に違反する違法な行為というべき」とし、「本件競業避止条項に違反したことを理由とする裁判上の損害賠償請求を認容することは、違法行為を保護することにほかならず、民法90条の趣旨に照らし許されないというべきである。」として原告の請求を棄却しております。

 

さて、これを当業界に当てはめますと、整体師やカイロプラクターなどの施術は入れ墨同様、医師法第17条に違反すると思われる行為もありますが、形式上、あはき法第12条に違反するわけです。

 

あはき法第12条違反に関しては昭和35年の最高裁判決により、禁止処罰は人の健康に害を及ぼすおそれのある行為に限定され、その結果、無免許施術は放置されることになりました。

その結果、国民生活センター消費者庁が報告するように、無免許施術による健康被害が多発する結果となっております。

 

で、整体師やカイロプラクターが営業上の損害を受けたとして、損害賠償を請求する場合(請求する整体師やカイロプラクターを原告とする。)を考えてみましょう。

 

損害賠償請求を受ける側(被告)としては被告の行為と原告の損害には因果関係は無い、と主張する方法もありますが、私であれば「原告の営業行為はあはき法第12条に違反する違法行為であり、原告の損害賠償請求を認容することは、違法行為を保護することにほかならず、民法90条の趣旨に照らし許されないというべきである。」と主張します。

 

で、昭和35年の判例が問題となるわけですが、この判例のせいで無免許施術が放置され、健康被害が多発しているのは前述のとおりです。

この状況で裁判所があはき法第12条について判断した場合に「判例変更が無い」と自信を持って言える弁護士もいないと思います。

 

整体師などが営業売上に関する損害賠償請求を行った場合、判例が変更されて、医業類似行為を行なっただけで禁止処罰対象になる可能性もあるわけです。

 

判例変更といえば去年、強制わいせつ罪に関して判例が変更されております。

 

このように整体師やカイロプラクターなどの職業は、営業上の損害を受けて賠償請求を行うのもリスクのある商売なのです。

真っ当な商売であれば損害賠償が認められるかどうかだけ考えれば良いんですけどね。


消費者庁の発表資料「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」について

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昨日(2017年5月26日)、消費者庁から

法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に[PDF] 

という資料が公表されております。

 

以前に国民生活センターから発表された報告書、

 

手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−[PDF]

 

では国家資格者の施術による被害と、無免許業者による被害の区別が曖昧だったのに対し、今回の公表資料は「法的な資格制度がない医業類似行為の手技」と無免許業者による健康被害である旨、明確にしています

きっと調査の精度を上げたのかと思います。

 

また医業類似行為として「リラクゼーションマッサージ」も入れています。

よく治療目的でなく、慰安目的であるリラクゼーションなら無免許でも大丈夫、という風説が流れていましたが、「リラクゼーション」は医業類似行為であり、人の健康に害を及ぼすおそれがあれば禁止処罰の対象になる旨、明らかになりました。

 

さて、国民生活センターの報告書は2007年(平成19年)から2012年(平成24年)6月末までの約5年間に寄せられたデータを集計し、危害情報が825件としています。

国家資格者による危害情報は139件(16.8%)で、接骨院が112件(13.6%)、指圧が27件(3.3%)でした。
国家資格の有無が不明として「マッサージ」「○○マッサージ」の危害情報が281件(34.1%)、
カイロプラクティックや整体などの無免許施術による危害情報が366件(44.4%)でした。

 

今回の消費者庁の公表資料においては2009年(平成21年)9月1日から2017年(平成29年)3月末までの7年半のデータで、無免許施術のみのデータになります。

 

そして危害情報のみで1,483件となり、一ヶ月以上の治療期間を要する事故が240件(約16%)となっております。

推移は下記図になります。

 

 

平成24年に事故件数が一気に増えていますが、このときに国民生活センターによる報告書が発表され、国民に周知されることにより、報告が増えたと思われます。

 

そして各手技療法と治療期間のグラフになります。

 

 

どの療法でも一ヶ月以上の治療期間が必要な健康被害が発生しております。
また神経・脊髄損傷の件数が最も多くなっております。

 

数千回の施術で被害が無くても危険性が否定されないのはズンズン運動事件民事裁判で示されたとおりです。

 

身体機能回復指導が本件事故までに数千回行われている実績があるとしても,その危険が現実化しなかったに過ぎず,数千回に及んで身体機能回復指導が行われたことをもって,被告らにおいて同施術の危険性の予見ができなかったとはいえない。

 

よってこのグラフに書かれている、「整体」「リラクゼーションマッサージ」「カイロプラクティック」「リンパ・オイル・アロママッサージ」「骨盤・小顔矯正」「リフレクソロジー」はすでに危害情報があるのですから「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」であり、無免許で行えば違法であるのは明らかです。


で、6ページ目の「4.消費者の皆様へ」なのですが誤りがあります。

 

「整体」、「カイロプラクティック」、「リラクゼーションマッサージ」などの法的な資格制度がない施術を受ける際は、以下の点に気を付けましょう。

 

とあり

<施術前>
1) 疾病がある方は施術を受ける前に医師に相談しましょう。
・ 疾病(例えば:心疾患、けい椎脊索狭さく症、骨粗しょう症など)がある方は、症状によっては、施術によって症状がひどくなってしまう場合もあります。施術を受ける前に医師に相談しましょう。

2) 情報を見極めて施術や施術者を慎重に選びましょう。
・ 施術には有資格のあん摩マッサージ指圧及び柔道整復もあり、あん摩マッサージ指圧の国家資格を持っている人は、資格証などで確認できます 。
・ 法的な資格制度がない手技を含むいわゆる「統合医療」は多種多様であり、玉石混交とされています。施術を受ける前によく情報を見て判断しましょう。


とありますが、医師に相談する必要がある時点で、医行為の「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」にふれます。
医師の判断を求めているわけですから。

 

また持病がひどくなる可能性がある施術行為自体、「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」です。

 

なのでどうしても無免許の施術を受けたいときには
「誰に行っても安全な施術であることを医師によって証明されていますか?」と聞くべきです。

 

すでに危険性を示す公的な情報がある以上、同様の施術を行っている業者が医師による安全証明を受ける必要が有るのもズンズン運動事件民事訴訟で示されています。

被告Dは,これまで,医師等の専門家に本件法人の顧問を依頼したり,身体機能回復指導について医師等の監修を受けてその指導・助言を得たりしたこともなく,被告D自身,マッサージの資格を取得したとか,医学的知識を有していたとも認められないのであるから,被告Dによる身体機能回復指導の施術であれば,乳児の窒息等の危険がないという被告Eの主張は,何ら具体的根拠のない独自の見解にすぎない。

 

そんなわけで2)で書かれているように、国家資格者は資格証で確認可能ですので、国家資格の施術所を選び、資格証を見せてもらいましょう。

 

あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師と無資格者との判別のためのリーフレット 厚生労働省[PDF]

 

で、施術中ですが

 

<施術中>
3)施術を受ける際は、施術者に自分の体調や希望をしっかりと伝えましょう。
・ 今までの既往症や現在の体調について、また、どのような施術を受けたいのかなどを、施術者にしっかりと伝えましょう。継続して施術を受ける場合は、現在の体調等とともに、前回の感想などを伝えることも大切です。
・ 施術中に不安な事があれば、その場で確認しましょう。また、痛みや違和感、不快感などを感じた場合は、すぐに施術者に伝えましょう。

 

既往症を聞くことは問診であり、医行為であり、無免許業者には許されません。

既往症の聴取が必要な施術自体が「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」です。

 

問診は医行為である。

体調が悪くなったら施術の中止を申し出て、料金の返還を求めましょう。

<施術後>
4)施術を受けた後で異常を感じた場合は、すぐに施術を受けた施設や運営者に伝え、なるべく早く医師に相談しましょう。
・ 異常を感じた際、「好転反応」などと言われてそのままにしたり、継続して施術を受けたりすると、症状が悪化する場合があります。施術を一旦中止し、医師に相談しましょう。

5)トラブルの解決が困難な場合は、お近くの消費生活センター等に相談しましょう。

 

施術後に関しては正しいです。
とくに健康被害を受けたことを証明するためには医師の診断書が必要であり、施術から時間が経った場合、因果関係立証が困難になります。
そしてかならず消費生活センターや警察に報告してください。

警察は1件ぐらいの情報では動かないようですが、さすがに複数の被害情報があれば動くようです。

 

本来であれば無免許施術は受けるべきではない、と発表するのが国民の安全のためには良いのです。
それに制限をかけているのが昭和35年の最高裁判決であり、この判例を変えない限り、また無免許施術による被害者が出るわけです。

 

国民生活センターの報告書が出された平成24年よりも後でも無免許施術による健康被害が発生しているのですから。
 


無免許施術の健康被害と共同不法行為(ズンズン運動の民事訴訟判決を読んで)

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ズンズン運動と称する無免許マッサージで乳児が新潟、大阪で一人ずつ、合計2人死亡する事件があり、業務上過失致死傷罪で有罪になっております。

 

そして大阪の両親が施術を行った者(NPO法人の理事長)、及び広報を行っていた者(副理事長)に対し、損害賠償を求める裁判を起こしていたのですが、2016年末に判決が出され、理事長だけでなく、副理事長の責任も認める判決となっております。

 

元NPO理事長らに賠償命令=「ズンズン運動」で男児死亡−神戸地裁

判決によると、元理事長は14年6月2日、大阪市淀川区のサロンで、男児を太ももの上にうつぶせで乗せた後、首をもむなどして窒息状態にし、6日後に低酸素脳症による多臓器不全で死亡させた。
 山口裁判長は、施術の危険性を予見できたと指摘。元副理事長も13年の同様の死亡事故(筆者注:新潟の事件)後、危険性を確認しないまま施術をブログで広報するなど、ほう助した責任があると判断した。


そして、この民事裁判の判決は裁判所のサイトで閲覧できます。

 

神戸地裁平成27(ワ)1816

 

まず当事者を。

 

原告側
C:原告A,Bの息子で被告Dの施術で亡くなった。
A:Cの父
B:Cの母

 

被告およびNPO法人
被告D:NPO法人の理事長で施術者
被告E:副理事長で事務や広報を担当。Dと内縁関係。
訴外F:NPO法人の施術者(新潟第1事件当時の副理事長)

 

その他
訴外G:被告Dの施術で最初に亡くなった子供(新潟第2事件)。

 

時系列は下記の通り。

平成17年9月:新潟第1事件(NPO法人の訴外Fの施術によりチアノーゼ発生)
平成25年2月:新潟第2事件(被告Dの施術で訴外Gが死亡:報道された新潟ズンズン運動事件はこちら)
平成26年6月:本件事故(大阪)(被告Dの施術でCが死亡)


この裁判の争点ですが、

被告Dは本件事故について不法行為責任を負うことについては争わず,被告らは,原告らの損害について争っていないため,本件の争点は,被告Eが本件事故に関して被告Dを「幇助した者」(民法719条2項)に当たるか否かであり,具体的には,被告Eにおいて被告Dによる本件施術の危険性を認識し得たにもかかわらず,何らこれを回避することをせず,被告Dによる本件施術を容易ならしめたということができるか否かである。

というわけで広報を行っていた副理事長の被告Eが共同不法行為の幇助にあたるかどうかが争点です。
 

民法719条の条文は

  数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2  行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
 

となります。

副理事長Eが被告Dの施術行為の危険性を認識して幇助した、となれば連帯して賠償責任を負うわけです。

 

ではどのように裁判所が副理事長Eに幇助したと認定したのか、見ていきましょう。

 

最初は原告、被告の主張が書かれていますので「第3 当裁判所の判断」から読んでいきましょう。
1認定事実の(2)本件法人における被告らの業務内容より

 

被告Eは,本件法人の設立当初の事務所として使用されていた実家建物の火災後,被告Dの活動を支援するなどして被告Dと懇意となり,被告Dと内縁関係となった後,平成17年5月に本件法人の理事に就任して以降,副理事長として,本件法人の収支等の事務経理全般,官庁への報告,本件法人のホームページやブログの更新作業等を行っていた

 

というわけで副理事長Eは施術自体は行っておらず、事務と広報を行っていたわけです。

 

そして平成17年に新潟第1事件がおきます。

 

本件法人の当時の副理事長であったFが平成17年9月27日にベビーマッサージと称する施術を乳児に行っていたところ,うつ伏せになっていた同乳児の顔色が悪くなり唇が茶色になる異変が生じるという事件が発生した。
その際,Fが施術を中止し,同乳児を抱いて揺らすなどしたところ,乳児の顔色が戻り,泣き声をあげ,大事に至ることはなかった。
被告Eは,当時話題になっていた乳幼児突然死症候群に関する記事をインターネットで検索し,そのうちの一部の記事を印刷して被告Dに対して交付するなどした。

 

そして新潟第2事件(死亡事件)が発生します。
 

イ 同事件は,業務上過失致死事件として捜査が行われ,被告Dは,警察官及び検察官の取調べを受け,警察官からは,身体機能回復指導の施術の際,Gが窒息状態となっていた可能性があること,検察官からは,施術方法に関して医師等の専門家に相談して乳児の窒息の危険がないか確かめるよう促された。

 

被告Eは,新潟第2事件の後,被告Dに対し,Gの死亡の原因が不明であることから,本件施術の方法の変更の必要性,救急講座の受講を受けるよう進言したものの,同事件の発生及び経緯等に関し,監督官庁に報告することはなく,また,ホームページやブログに掲載して公表することはしなかった。
また,被告らは,新潟第2事件後,医師に対して身体機能回復指導の施術の危険性等について尋ねることもせず,乳児に対する身体機能回復指導の施術を継続して行っていた

 

そして新潟地検がこの事件を起訴しなかったために、大阪の事件が発生し、乳児Cが亡くなり、大阪府警が業務上過失致死罪で捜査し、施術を行っていた被告Dは起訴され、有罪となります。副理事長Eは書類送検はされているものの、刑事裁判にはかけられておりません

 

そしてこの民事裁判において、原告は被告Eはブログ記事などによる広報によって、被告Dの施術を幇助した、としてその責任を追求しているのです。


では判決文の(3)被告Eの主張について、を読んでみましょう。

被告Eの主張は青文字裁判所の判断は赤文字で示します。

 

(3) 被告Eの主張について

 

被告Eは,身体機能回復指導には,乳児を床に仰向けにして施術することもあり,同施術の対象乳児ごとに施術内容は異なる上,本件施術中,被告Dは自身の大腿部にうつ伏せとなったCの額に手を当てて頭部を支えて窒息しないようにしていたし,Cの頸部をもむ手指に強い力が入らないようにしていたなどと主張して,身体機能回復指導及び本件施術の危険性を争う

 

しかしながら,前記認定事実(4)及び証拠によれば,被告Dは,首のすわらない時期の添い寝等により,乳児の身体に歪みが生じ,その大元となるのが頸部や腰部のねじれであり,これを解消して乳児の健全な発育を促すためには,首筋の緊張を緩める必要があるなどとして,身体機能回復指導中,乳児の頸部に手指をしっかりと当ててもみほぐすことを重点的に行っていたことが認められ,頸部には神経や血管が多数走っており,徐脈を引き起こす迷走神経反射は頸動脈洞を5秒程刺激することによっても生じ得るものであること,乳児の首は細く,また,筋力も未発達で外からの刺激に容易にさらされることをも併せると,身体機能回復指導が,施術対象乳児によって多少の内容の変更があったり,常時,乳児をうつ伏せにしてその頸部をもむものではなかったとしても,そのことは身体機能回復指導として行われた本件施術の危険性を否定する事情にはならない。

 

また,被告Dが本件施術中にCの額に手を当ててその頭部を支えていたとしても,それにより,Cの胸腹部が圧迫される状態が完全に解消されるものではない上,成人とは異なり胸郭や胸筋が未発達な乳児は,肺に外力が加わりやすいことをも考慮すると,上記事情もまた,身体機能回復指導として行われた本件施術の危険性を否定する事情にはならないことは明らかであって,被告Eの上記主張は採用できない

 

また,被告Eは,本件事故が起こるまで,身体機能回復指導が乳児の発達に有用であることが広く乳児の保護者に認識され,被告Dは,延べ数千回もの施術を行ってきたこと,新潟第2事件は死因が明らかではないとして被告Dの刑事責任は問われていないことを理由に,被告らにおいて,身体機能回復指導の危険性を予見することはできなかったと主張する

 

しかしながら,上記説示したとおり本件施術を含むうつ伏せにさせた状態で頸部をもんで刺激を与えるといった身体機能回復指導自体が有する乳児の窒息の危険性に鑑みれば,身体機能回復指導が本件事故までに数千回行われている実績があるとしても,その危険が現実化しなかったに過ぎず,数千回に及んで身体機能回復指導が行われたことをもって,被告らにおいて同施術の危険性の予見ができなかったとはいえない

 

また,新潟第2事件後については,捜査の結果,Gの死亡の原因が身体機能回復指導以外にあるものと判断されたわけではないのであるから,被告らにおいて,身体機能回復指導の施術に危険がないか点検・確認する機会があったというべきであり,むしろ,そうするよう検察官等から指導を受けていたにもかかわらず,何ら具体的な措置を講じなかったというのでありGの死因が明らかとならなかったことが,身体機能回復指導の危険性の予見可能性を否定する事情になるものではないし,証拠(甲30)によれば,被告Eは,新潟第2事件後,被告Dに対し,心臓マッサージや人工呼吸などの救急救命措置のやり方を学ぶよう示唆していたのであり,遅くとも,その頃までには,身体機能回復指導が乳児を心停止に至らせる危険性を有するものであることを認識し得たものと認められる

 

さらに,被告Eは,被告Dが,一般的に乳児の頸部を揉んだりすることが危険だとしても,被告Dであれば,多くの乳児に身体機能回復指導を行ってきた経験があるためその危険はない旨話し,本件法人の他のスタッフが行うことを禁じていたため,被告Eにおいて,本件施術の危険性を認識することはできなかったと主張する

 

しかしながら,被告Dが身体機能回復指導は経験の豊富な被告Dにしかできない施術であるとして他の本件法人のスタッフが同施術を禁じていたというのは,むしろ,身体機能回復指導の危険性を認識していたことの表れというべきであるし,被告Dは,これまで,医師等の専門家に本件法人の顧問を依頼したり,身体機能回復指導について医師等の監修を受けてその指導・助言を得たりしたこともなく(甲29,31,被告E本人(23頁,26頁,31頁)),被告D自身,マッサージの資格を取得したとか,医学的知識を有していたとも認められないのであるから,被告Dによる身体機能回復指導の施術であれば,乳児の窒息等の危険がないという被告Eの主張は,何ら具体的根拠のない独自の見解にすぎない

 

以上より,被告Eの上記主張はいずれも採用できない。

 

危険性の有無と、危険性の認識は異なりますが、危険性を認識できていた、ということは危険性が有るという前提になります。

 

では重要な点をいくつか。

 

まず施術対象者によって施術方法を変えていたとしても危険な施術である、と判断しています。

富士見産婦人科病院事件でも示されましたが、判断が必要な施術行為は無資格者には許されない、人の健康に害を及ぼすおそれのある行為です。

 

当ブログ記事

無免許業者に許される行為は機械的に行っても安全性が確保される行為に限定される。

無免許業者に許される行為は、保健衛生上危害を生じるおそれが無いことを保てる施術に限定される。

次に被告Eは数千回の施術を行っていたのだから危険性を認識できなかった、と主張していますが裁判所は危険性が現実化しなかっただけの話で、施術方法を考えれば危険性は予見できたとしています。

 

後掲のコンタクトレンズ医師法違反事件では抽象的な危険でも医師法違反が成立する、つまり保健衛生上害を及ぼすおそれがある、としています。

 

また理事長である被告Dは他のスタッフが乳幼児の首を揉むのを禁じていたわけですが、それこそが被告Dが施術の危険性を認識していたことの表れ、としています。

 

コンタクトレンズ医師法違反事件では

医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為などというものは世の中に存在せず、ある行為から右危害を生ずるか否かはその行為に関する技能に習熟しているかどうかによって決まるのであって医師資格の有無に関係しない

という被告人の主張に対し、東京高裁は

医行為とは、「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と理解するのが正当というべきであって、
これと異なる見解に立つ所論は、独自の主張であって、採用の限りでない。

と被告人の主張を退け、免許以外の属人的要素によって安全性の判断を行うことを否定しています

 

コンタクトレンズ医師法違反事件に関する当ブログ記事

技能に習熟していても医師法違反は免責されない。

 

そして新潟の死亡事件では刑事訴追を受けていなかった(本件大阪事件の有罪判決後に新潟地検が起訴、有罪確定)ことを理由に、危険性を予見できなかったとも主張していたわけですが、他の死亡原因が特定されたわけではないし、検察官から医師による確認を促されたのだから危険性は予見できてた、というわけです。

 

この時点で医師による確認を受けて、安全であるという意見を貰えていたなら被告Eは責任を問われずに済んだかもしれませんし、そうなれば安全確認をした医師が責任を問われることになります。

 

ズンズン運動では新潟の死亡事故で危険性は予見できる、と判断されましたが他の手技療法でも国民生活センターが健康被害の報告書を出されており、人の健康に害を及ぼすおそれは予見できます。
 

よって、整体やカイロプラクティック、リラクゼーションなど、健康被害が消費者庁に報告されている施術を行う場合、その施術方法に関して医師のお墨付きを得なければ危険性は予見できた、と判断されてもおかしくありません。

 

このズンズン運動民事判決は過去の医師法などの判例から照らして妥当な判決ですが、直接、無免許マッサージの危険性の予見性を認定したという点で重要です。

 

ズンズン運動事件でお亡くなりになられたお子様たちのご冥福を祈らせていただくとともに、このような被害を二度と生じさせないよう、ご遺族が得られたこの判決を無免許施術の撲滅のため、活用させていただきます。


整体、カイロプラクティック、無免許マッサージなどの違法施術の返金を求めるには?


無免許であることを知らされずに、整体師やカイロプラクティック、リラクゼーションなどと称する無免許マッサージなどの違法施術を受けた場合、施術料金の返還を受けることは可能でしょうか?

 

また判例を引用しながら解説していきます。

消費者庁の資料になります。
http://www.caa.go.jp/planning/pdf/140516_shiryou03.pdf

 

この65頁目の判例となります。


名古屋地裁 昭 54(ワ)2242 号 出典 判時1081号104頁

 

原告の娘、春子さん(昭和48年生まれ)は生後間もなく治療困難な難聴と診断されます。
そして難聴に良いと知人から聞いて、被告の加持祈祷治療を昭和51年11月から一回8,000円で受け、昭和54年3月まで合計737回、合計589万6,000円を治療費として支払ったものの、難聴は改善しませんでした。

そして治療費の返還を求めた訴訟がこの事件となります。

 

原告は治療費返還の請求理由として

 

  1. 債務不履行に基づく損害賠償請求
  2. 治療費返還契約に基づく請求
  3. 公序良俗違反の契約無効による返還請求

といったのを挙げています。

 

1は治癒を約束したにも関わらず、治癒させていないから債務不履行である、よって支払い済みの治療費を返せ、ということです。

 

2は原告によると、被告は難聴を治せない場合には治療費を返還することを何度も約束したそうです。

 

3は被告の行為は何としても子の病気を治したい親の弱みにつけこんで、法外な料金を博する暴利行為であり、本件治療契約の正当な対価を超えた部分は公序良俗に反し無効であるとし、そして本件治療契約における正当な対価は一回につき金一、〇〇〇円を超えないとして、超過分の返金を求める、というものです。

 

1については、治療行為は治癒を保障するものではないから却下されます。

 

原告主張のごとき治癒という結果を目的とした特約付治療契約ないし請負契約と認めることはできず、治療の処理を目的とした一種の委任契約と認めるのが相当である。
 そうすると被告は春子の難聴を治癒させることができなかったが、このために原告に対し債務不履行の責任を負担するいわれはない。

 

というのが裁判所の判断となります。

 

2については証拠不足で返還契約をしたとは認められないとして却下。

 

で、3についてですが、この内容については前掲の消費者庁の資料にも書いてあります。

 

被告は1年内に治す、と言っていたので1年経過時に原告に対して治療継続の再考を促すべきであった、と裁判所は判断しています。

そして一回あたりの治療費ですが、娘さんだけでなく、原告の家族3人の祈とうも必要ということで4人分の祈祷料として8,000円となっておりました。

被告が所属する善導会では一回あたりの祈祷料は2,000円でした。

 

なので一回あたり2,000円で、1年間分(354回)の治療費(70万8,000円)は正当な取得と認め、それ以上の治療費は公序良俗に反するとして、518万8,000円の返金を命じたのでした。

 

暴利行為の禁止、ということで消費者問題の判例としても重要です(だから消費者庁の資料でも紹介されている)。

 

さて、判決の中で

 

前記一、3で認定した被告の療術行為が医師法一七条で禁止されている医業の内容である医療行為に当たるとは認められず、またあん摩師・はり師・きゆう師及び柔道整復師法一二条で禁止されている医業類似行為に当たるものとも認められない。
そして前認定のごとき被告の加持祈とうはそれ自体が公序良俗に反するということができないのはもちろんである。

 

とあるので、当業界の方々はどのような治療行為だったのか、気になるかと思います。

 3 被告のした施術ないし加持祈とうの大要は以下のとおりであった。

 

(一)バイブレーターによるマッサージ。患者の着衣の上にタオルを置き、その上から約一五分間、市販のバイブレーターを用いて身体をマッサージする。

 

(二)高野山温灸。患者の身体の上にタオルと八つ折りにした市販の紙を重ねて置き、その上から高野山燈心会本部特製の円筒形のもぐさの固まり(直径約一・五センチ、長さ約一五センチ)に点火した部分で軽く圧して皮ふを温める。全身数十箇所のつぼに約一〇分間施す。

 

(三)高野山オリーブ油を脱脂綿にしみこませて耳に入れる。

 

(四)吸引。直径約一・八センチ、長さ約四・五センチのガラス製の円筒形の器具を用いて、患者の首の皮ふを押圧して引っ張る。一〇回位施す。

 

(五)抜き取り封じ。市販のプラスチック製の色付きコップにざらめ砂糖を入れ、その上に人形を印刷してある形を細かく折って入れ、コップに蓋をする。その蓋の上に善導会本部会長小松観晃から買受けた紙(悪霊を押さえる意味の梵字が印刷されている。)を約一〇分間呪文を唱えながら糊ではりつける。

 

(六)延命封じ。鬼を追い払う意味の文字や六体地蔵の図案が書いてある紙を患者の身体に当て、これを二重に封筒に入れて川に流す。

 

「療術行為」と言っているので医業類似行為じゃないか、という気もしますし、(一)なんかは無免許マッサージの可能性も。(二)は灸、(四)は医業類似行為じゃないかと思います。(三)が医業類似行為か、宗教行為かは微妙ですが。

 

さて、このような行為も医業類似行為とは認められないんだ、と思ったらダメです。

 

判決文全文を読めばわかるのですが、
原告、被告ともに被告の治療行為を医業類似行為だとは主張していないんです。

 

日本の民事訴訟は弁論主義といいまして、原告、被告、どちらも主張していない事実を判決の基礎としてはいけないのです。

 

弁論主義について、弁護士事務所が解説している記事がありますので詳しくはそちらをご覧ください。

 

なので裁判官が勝手に被告の治療行為を医業類似行為と認定しては弁論主義に反することになってしまうのです。

 

仮に被告の治療行為を医業類似行為と認定し、違法施術契約だから公序良俗に反し、無効な契約として全額返金を命じたとしましょう。

 

この場合、被告は控訴して、弁論主義に反する、と主張するでしょう。
こうなると高裁ではその主張を認めて地裁に差し戻しをする可能性もあります。

また医業類似行為の禁止処罰は最高裁判決により「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」に限定されています。
そのため、控訴審でひっくり返される危険もあるわけです。

 

そのため暴利行為と認定し、一定額の返金を命じたのは弁論主義と良心の狭間での判決だと言えます。

 

そして「医業類似行為」という言葉を判決で出したのは、原告がさらなる返金を求める場合でも、あるいは被告が控訴した場合でも、被告の治療行為を医業類似行為として主張できるように、という配慮だと思うのです。

 

この裁判、事件番号から昭和54年に起こされ、判決は昭和58年3月31日です。

この間、薬事法に関し、無認可医薬品については食品と同成分で有効無害なものであっても、その製造販売を禁止処罰するのは憲法22条に反しない、という判決と、無認可の医療機器の製造の禁止処罰にあたっては「人の健康に害を及ぼすおそれ」を判断する必要は無い、という判決が最高裁で出されます。

 

つかれず事件:昭和57年9月28日判決

吸引器事件:昭和54年3月22日判決

 

この薬事法判例の流れからすれば医業類似行為に関する最高裁判例の変更も可能だったと思われます。
裁判官はその可能性も認識していたのではないでしょうか?

 

さて、この裁判、判例データベースでは「控訴」と書かれていますが、控訴審の判決は判例データベースには収録されていないようです。控訴をしたのが原告、被告、どちらなのか、その双方なのかもわかりません。

 

判決を得ないで控訴審を終了するとすれば控訴取り下げ、認諾、和解といったものが挙げられます。

控訴できるのは一審判決後の約2週間だけです。
なので迷ったら控訴、という感じです。

 

弁護士向けに仕事術を解説しているページなのですが
 

もし、依頼者が迷っているようであれば、とりあえず控訴をすすめましょう。 
控訴をした後に考え直して取り下げるということ可能ですので。 
一方、もし控訴をしなかった場合には、2週間を過ぎると控訴が絶対にできなくなってしまいます。 
一週間以内に控訴するかしないか決断。 
迷ったら控訴。

 

で、50日以内に控訴理由書を提出します。
なのでとりあえず控訴してから判例などを調べて控訴理由書を書くこともあるわけです。

 

昭和58年ですから今のようにコンピューターなんて普及しておらず、オンラインの判例データベースなんてありません。

被告としては500万円も返せと言われたらとりあえず控訴するでしょう。

 

原告としてはどうなんですかね?
弁護士はついていましたから、主張していない「医業類似行為」という言葉には反応するでしょうね。

原告が控訴しなくても、被告が控訴した以上、答弁書を作成する必要があるわけで、そのときに「医業類似行為」という言葉から必要な判例を調べ、

「被告の療術行為は医業類似行為であり、違法施術契約であるから公序良俗に反し、契約は無効。よって被告は治療費を全額返金する義務がある。」

と主張できるはずです。

 

そしてこのように暴利をむさぼられた被害者に対し、「人の健康に害を及ぼすおそれ」が証明されなければ治療費を返金する必要性は無い、と言える人はよほどの自己責任主義者でしょう。

 

このように倫理観を持たずに暴利をむさぼる業者の存在も、無免許業者による医業類似行為を禁止する理由としては十分です。

つまり昭和35年判決の判例変更の可能性があったわけです。

 

控訴審の最初の口頭弁論で原告の上述のような主張がされた場合、被告(とその弁護士)はどう考えるか。

 

まず自分の治療行為が判決で違法とされる可能性を考えなければいけません。
もし違法認定されれば、他の患者さんたちにも返金する必要が出てきます。
なので違法認定の判決は回避しなければいけません。

そうなると控訴取り下げ、認諾、和解といった選択肢が出てきます。

 

原告も控訴していれば被告が控訴を取り下げて終了、というわけにもいきません。

というわけで認諾や和解で控訴審判決を回避したのではないか、と思うわけです。

 

私が判例データベースを検索しても、医業類似行為を違法施術契約として施術料金の返還を求めた裁判の判決はありません。

この裁判の1の請求理由のように、治癒されなかったことを理由に、消費者契約法の不実告知に該当するとして、施術料の返還を求めた訴訟はありますが、敗訴しております。
本文は収録されていないので詳細は不明なのですが。

おそらく弁護士で医業類似行為というのを知っている人が少ないのでしょう。

 

また知っている場合、薬事法の最高裁判例も把握していると思われるので判例変更の可能性が高いことを示しながら示談しやすいわけです。裁判になったとしても和解に持ち込みやすく、判決は出されません。
被害者としては被害が回復されることが目的であり、必ずしも判決を得る必要はありませんから。

 

というわけで無免許業者の皆様、違法施術として全額返金を求められた場合、拒否できる法的な理論武装はできておりますかな?


協同組合に対する厚生労働大臣認可を用いて騙す表示は優良誤認表示である

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以前の記事でも書きましたが、協同組合として厚生労働大臣に認可されたことを表示して資格商法を行っている事業者がいます。

 

無免許業者の広告への対応から見える各タウン誌の倫理観

 

上記の記事でも書きましたが、組合員の相互扶助を目的に協同組合は認可されるのであって、そこに施術の安全性や有効性は関係ありません。

 

協同組合スクール

 

整体師やカイロプラクター、なんちゃらセラピストのスクールに「厚生労働大臣認可」と書いてあればその技術や安全性について厚生労働大臣が認可したと誤解するのが普通ではないでしょうか?

 

さて、協同組合が厚生労働大臣に認可されているのは事実であり、その認可された協同組合がその資格商法業者(スクールなど)を指定しているのも事実であり、その表記の違法性を問うのは難しいかな、と思っていた次第です。

 

しかし別の目的で認可されたことを認可目的と関係無い目的に表示した場合には不正競争防止法の品質誤認惹起表示になる、という判例があったのです。

 

大阪地裁平成7年2月28日判決 平成3(ワ)3669号
出典 判例時報1530号96頁

主たる用途を「建築物の屋根・壁・天井」として建設大臣の認定を受けた不燃材の認定番号を、その不燃材をフランジガスケット材として販売する際に、パンフレットやカタログに表示したことが不正競争防止法の品質誤認惹起表示とされた。

 

品質誤認惹起表示を一般消費者向けに対して行えば、景品表示法上の優良誤認表示となります。

 

施術の安全性や効果、あるいは得られた資格に関して厚生労働大臣が全く関係ないことを事前に伝えなければ消費者契約法の不実告知、あるいは不利益事実の不告知にもなるでしょう。

 

消費者契約法による契約解除[岩見沢市消費者センター]

 

広告が消費者契約法上の「勧誘」にも該当することは、先日のクロレラ裁判の最高裁判決で示された通りです。

 

医事法規と優良誤認表示

 

もしこれを読まれた方で、「厚生労働大臣認可」の文字に騙された、という方は消費生活センター適格消費者団体にご相談下さい。


 


第8回:差止請求レベル6 医業類似行為の定義の拡張

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第1回:不正競争防止法の概要
第2回:品質誤認惹起表示(優良誤認表示)
第3回:要免許行為の表示の差し止めを求めるーその1(レベル5)
第4回:要免許行為の表示の差し止めを求めるーその2(レベル4)
第5回:要免許行為の表示の差し止めを求めるーその3(レベル1〜3)
第6回:差止請求

第7回:損害賠償請求

 

 

世の中、計画通りにはいきません。
今回の内容、本来なら第7回で書くべきなんでしょうけど、思いついたのが第7回を書いた後でしたので。

 

あはき法第12条で禁止処罰される医業類似行為の定義は

 

疾病の治療又は保健の目的でする行為であって医師・歯科医師・あん摩師・はり師・きゅう師又は柔道整復師等の法令で正式にその資格を認められた者がその業務としてする行為でないものをいう

 

とHS式無熱高周波療法の第1次控訴審(仙台高裁昭和28年(う)375)にて判示されております。

 

「疾病の治療又は保健」と目的が限定されているわけです。

 

法律本来の運用、すなわち医業類似行為を行っただけで禁止処罰の対象とする場合、どのような目的をもった行為かが不明確では罪刑法定主義に反するでしょう。

 

さて、現在、医行為の定義
「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」
となっております。

 

しかし以前、例えば昭和28年05月21日大阪高裁判決では

 

医行為とは人の疾病の治療を目的とし医学の専門知識を基礎とする経験と技能とを用いて、診断、薬剤の処方又は外科的手術を行うことを内容とするものを指称し、等しく人の疾病の治療を目的とするもの

 

と判示され、以前は医行為も疾病の治療を目的とする、とされていたのでした。

 

ただ疾病の治療目的を必要条件にした場合、病気の治療を目的としない、美容外科は医行為じゃない、という話になってしまいます。

そのため現在の医行為は目的を限定せず、危険性のみに着目して、

 

「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」

 

となっております。

 

さて、消費者庁が措置命令を出したニュースが記憶に新しい小顔矯正の整体ですが、美容目的となり、仮に判例が変更されても「疾病の治療や保険の目的ではない」と言い張って業務を継続することが考えられます。

 

そういう言い訳を許す場合、判例変更を行っても無駄になってしまいます。

 

そこで美容などの目的も医業類似行為の定義に加えるべきです。
医行為も定義が拡張されたのですから。

 

ちなみにHS式無熱高周波療法の第二次最高裁判決では

 

前記法律一二条は「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない」と規定し、同法一条に掲げるものとは、あん摩(マツサージおよび指圧を含む)、はり、きゆうおよび柔道整復の四種の行為であるから、これらの行為は、何が同法一二条の医業類似行為であるかを定める場合の基準となるものというべく、結局医業類似行為の例示と見ることができないわけではない。

 

と判示しており、あはき柔の施術目的として美容などがあれば医業類似行為の目的にもなるわけです。

そして美容を目的として施術している鍼灸マッサージ師もおります。


また薬機法(旧薬事法)は医薬品や医療機器の定義として下記の目的が書かれています。

 

  • 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されること
  • 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすこと

 

従来の医業類似行為の定義の場合、前者は含まれますが、後者が含まれるかは微妙なところです。
小顔矯正であれば後者の定義に当てはまるでしょう。

 

なので医業類似行為の定義を

 

「人の疾病の治療若しくは予防(保健)又は人の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことを目的とする行為であって、医師・歯科医師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師又は柔道整復師等の法令で正式にその資格を認められた者がその業務としてする行為でないもの」

 

と拡張すべきと考えます。

 

これなら美容目的だから、という言い訳で無免許施術を許さずに済みます。

 

目的の変遷

 

 

 

なお、美容目的、というかエステティックサービスによる危害報告ですが、消費生活センター等に報告される危害情報の上位5位以内には毎年入っています。

 

2015年度のPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)にみる危害・危険情報の概要

 

 

2ページめを見ると「危害情報」の概要として

商品等分類別にみると、1位は「保健・福祉サービス」(「医療サービス」、「エステティックサ ービス」、「美容院」、「歯科治療」など) 2,804 件(26.4%)、2 位は「食料品」(「健康食品」、「調理食品」、「飲料」、「菓子類」など) 2,259 件(21.2%)、3 位は「保健衛生品」(「化粧品」、「医薬 品類」、「家庭用電気治療器具」など) 1,791 件(16.8%)、4 位は「住居品」(「家具類」、「洗濯用 洗浄剤」、「ふとん類」など) 932 件(8.8%)、5 位は「他のサービス」(「外食」など) 602 件(5.7%) でした。(表 1)

 具体的に商品・役務別にみると、1 位は「化粧品」1,036 件(9.7%)で、前年度(1 位、1,227 件)と同じ順位でしたが、自主回収している薬用化粧品の白斑トラブルに関するものが減少したことなどにより、191 件減少しました。2 位は「医療サービス」904 件(8.5%)で、顔のリフトア ップなどの「美容医療」に関するものが 214 件減少したことなどにより 301 件減少しました。 3 位は、「健康食品」898 件(8.4%)で、前年度(4 位、583 件)から 315 件増加し、順位も上がりました。4位は「エステティックサービス」521 件(4.9%)、5 位は「外食」501 件(4.7%) でした。(表 2)

とあり、表2がこのようになっています。

エステの危害情報

 

エステティックサービスが保健・福祉サービスの中に入っているのも意外ですが、人体に関する知識を要求される点では当然かもしれません。

だから無免許のものが行うのを禁止すべきとも言えます。

 

事故情報データバンクで保健・福祉サービスに限定してエステの事故情報を調べたのですが、多すぎです。

そのうち、神経・脊髄の損傷を検索して出てきた事故情報の一部にリンクを貼り付けます。

 

小顔矯正

痩身エステ, 理美容用具その他

タイ式マッサージ, マッサージ・指圧(エステサロンで受けたタイ式マッサージだそうです。)

ネックマッサージ(これもエステサロンでの施術)

痩身エステ, 理美容用具その他, マッサージ・指圧

エステサービス

痩身エステ, 保健衛生品その他

小顔矯正, 美顔エステ(接骨院での無資格者による施術)

痩身エステ, 低周波治療器

エステでぎっくり腰, マッサージ・指圧

痩身エステ, 理美容用具その他

保健・福祉サービス - 理美容

マッサージ(エステ店)

 

これだけ危害情報があるなら明らかに「人の健康に害を及ぼすおそれのある行為」でしょ。


第7回:損害賠償請求

JUGEMテーマ:整体

 

過去記事をご覧いただいてない方は過去記事からどうぞ。

 

第1回:不正競争防止法の概要
第2回:品質誤認惹起表示(優良誤認表示)
第3回:要免許行為の表示の差し止めを求めるーその1(レベル5)
第4回:要免許行為の表示の差し止めを求めるーその2(レベル4)
第5回:要免許行為の表示の差し止めを求めるーその3(レベル1〜3)
第6回:差止請求

 

今回は損害賠償請求です。


品質誤認表示(優良誤認表示)の場合、損害賠償が難しいため、事業者はこれで訴えにくかったりします。

品質誤認表示を行った業者が得た利益のうち、訴えた業者のシェア分しか損害賠償は取れません。

 

一社だけで訴える場合、「訴訟費用>損害賠償」ということもあり、費用倒れの可能性もあります。
なので消費者庁などが優良誤認表示で措置命令を出すまで競合業者が放置する、というわけです。

 

そのため、正当に施術を行える国家資格者がまとまって訴訟を起こす必要があります。
地域の国家資格者全員が訴えれば、無免許業者の利益を全て損害賠償として請求可能になります。

 

損害賠償額=無免許業者の利益額✕原告(国家資格者)÷競合地域の現役国家資格者数

 

というわけです。

 

どうやって無免許業者の利益額を知るのか、ということですが不正競争防止法第7条はその推定根拠となる会計書類の提出を裁判所が命じることができます。

 

第七条  裁判所は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。

 

 

というわけで、訴えて、会計書類を出してもらってから請求額を確定すれば良いわけです。
逆に裁判を起こさなければこのような書類の提出を求めることができません。

 

またこの不正競争で得た利益は売上から変動経費を差し引いた額(限界利益)が認められるのが原則です。
家賃などの固定出費は控除されません。

 

そのため無免許の方が品質誤認惹起表示で利益を上げていた場合、手元に残った額よりも多くの賠償金の支払いを命じられる可能性もあります。

 

そのような支払いをする覚悟が無ければ無免許でこの業界に入ろうとは思わないことです。



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